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webエンジニアのメモ

 「0 to 100 会社を育てる戦略地図」を読む。

0 to 100 会社を育てる戦略地図

0 to 100 会社を育てる戦略地図

 

 転職先は、上場済みとはいえ創業10年ほどのベンチャーである。スタートアップから0 to 100までの過程で何をしていたのか、みたいなことをざっくり抑えておきたいなと思って読んでみた。まぁ、本書はそういう会社の成長を社員として数回経験し、現在は独立してコンサルもやってるという人が、個別企業のサンプルとしてではなく「再現性のある法則を見つけ出して紹介するので、社員や経営者の地図として使ってほしい」という内容である。もともと学生時代に昆虫の分類研究をしていたという筆者が、同様の考えで、創業から上場までのビジネスの法則性を見出すという冒頭の書き口もなめらかで、非常に整理された構成となっており読みやすい。フェーズごとのチェックポイントも設けられており、実用的。扱う内容もファイナンスから人事から営業から企業文化から広範囲に及ぶが、それぞれ「このフェーズでは気にする必要ないよ」みたいなメッセージがあるのもありがたい。多様性を気にしたり、新卒を採用するのは30以降のフェーズでいいよ、とか。

ただ、上場がゴールではないと前置きしつつも、基本webサービスなど、大きく成長しやすい事業がメインターゲットで、かつ成長することを是としてるので、細く長く続く事業をしたい、みたいな人にはあまり適用できないかもしれない。あと、俺が大好きな企業物語でもあるp-vine創成期「のめりこみ音楽起業」みたいに、この音楽を世に広めることが自分の「使命」だと感じることが出来るほどの熱意で起業する話なんかとは全く違う、スマートな内容である。

timit.hatenablog.comあと、特に序盤の「ファーストクライアントを見つけよう」とか「仕様を固めて試作品を商品にしよう」とか「商品を作る体制を作ろう」みたいなフェーズまでは、先日読んだ「ハルロック」がどうしても頭に浮かんでしまった。電子工作が大好きで、かつ周りの人の困りごとを解決するのも大好きな個人が企業するまでの物語が、まんま本書と通じていて脳内変換しながら読むことが出来た。また、本業でも今親会社から独立して拡大しつつある会社のサポートをしているので参考になったり。

timit.hatenablog.com

他にためになったフレーズなど。

・銀行が行う「融資」は会社に貸した金を金で回収する。ベンチャーキャピタルが行う「投資」は「株式」の購入に当たる。最初は出金しかない期間が続くので、入金と出金のバランス、キャッシュフローを気にしながら事業を続けるべし。

・クライアントに商品を提案する時には「主語を一人称にせず、二人称にすることが大切」。「あなたにとってこれだけ有益ですよ」という話をする。

・「○○社(クライアント名)の担当者を出世させよう」を標語にする。自分たちの成長が先方担当者の評価に繋がるように事業経営を行う。

・評価制度がその会社の特徴を決める。社員のどのような行動を評価するかという会社の価値観が出るから。