midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「ハルロック」を読む。

 面白すぎて5周くらい一気に読んだ。著者は「僕はまだ野球を知らない」でセイバーメトリクス理論を実践するマンガを描いている西餅氏。同作でもがっつり電子工作が出てくるが、本作は電子工作だけにとどまらず、起業や自治体との連携など大きな話に発展していく高揚感も味わえる傑作。

主人公の女子大生・ハルの視点を通して、家族や友人など身の回りで困ってる人を助けるためにドラえもんの秘密道具のような形でものづくりの過程を楽しく紹介してくれる。本作で作られた装置(?)はどれも設計図や作り方まできちんと説明されており、【猫見守りツイートシステム「neko-tter」】なんかは実際に作られてMaker Faireで出品されたという実績も持つ。これは猫の飼い主が自分の飼ってる猫をtwitterに登録し、首輪の位置情報や動きの情報を基に今何してるか分かるように猫がツイートするというもの。めちゃくちゃ実践的だし、本作でも描かれているが、猫がトイレと水場の往復がすごく多い→膀胱炎の疑いがある、みたいな感じで体調の変化も検知することが出来る、と「飼い猫がツイートする!」みたいな単なる面白さだけでない機能があることに気づかせてくれたり、生活してて気づかない、道具を媒介にして初めて見えてくる世界があることに気づかせてくれるのだ。

さらに、この作品の優れたところなのだが、主人公・ハルちゃんはものを作ること自体が大好きで色んな人のお助け道具を作ったり、電子工作の面白さを周囲に布教しようと頑張ったりしていくうちに、友人が広がり、勧められるままにMaker Faireに自分の作品を出品して対価を払ってくれる人がいると気づき、在学中に起業するという「成長物語」でもあるのだ。電子工作に対して周囲から奇異の目で見られて、大好きなのになかなか声高にはそれが言えなくて、というようなわだかまりがすごく共感できるし、だからこそこういう人が周囲にいたら応援したいし、一緒に仕事してみたいなと心から思えるような環境で読んでてすごく羨ましくなった。

最高な工作リスト

・会話用ロボ

明るい口調や暗い口調、または特定のワードの音声をフーリエ変換し、周波数成分からトーンを解析して反応する、おばあちゃんとの会話に使う福祉ロボ。Raspberry Pi音声認識ソフトを入れて反応語句を選択させる。

・ゴキブリ検知

Raspberry Piにカメラモジュールをつなげて、画像データを取得する。撮影する場所の平常時画像を覚えさせておいて、いつもと違うものを検知したらそれをサーチし、対象物のスピードや形からゴキと判断したらアラームを鳴らす。

・ぼっち・the・LED

twitterで「ぼっち」というツイートを検索し、位置情報がついたものを集計して、都市ごとに振り分けて世界地図に点灯させる。というものなんだけど、興奮してこれの詳細な作り方を語るハルがめちゃくちゃ可愛い。

・無駄な時間を可視化するツール

化粧とか「いやらしいこと考えてる時間」など、無駄な時間を各自計測するウェアラブルツール。

・GPSを使ってデートっぽいことが出来るゲーム

ヒントを頼りに、二人で推理しながらチェックポイントを探すゲーム。対象地点に行くとGPSでLチカする。

・猫見守りツイートシステム

無線モジュールZigBeeを使ってセンサーネットワークを作成し、水飲み場やトイレの場所等と猫の首輪の場所が重なればRaspberry Piから自宅ルータを経由してツイートする。

ティーバッティング出来る装置

筒の中に入れたプロペラをモータで回して風圧を作り、球を浮かせる。筒の入り口にドップラーセンサーをつけて球の有無を判断し、一球打ったらサーボモータを使って次の球をスロープになった配球口から配球する。

他にも色々あるけど、ほんわかして可愛い作品ばかり。