midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「澄江堂主人」を読む。

晩年の芥川龍之介を描いた漫画。なぜか芥川を含めて周囲の文豪たちの職業が小説家ではなく漫画家になっていて、漫画家とすることに何か大きな意図があるのかと思ったがその意図が汲み取れずよく分からなかった。ただ、芥川自身の悩みや不安を中心に、大正から昭和にかけての当時の日本の生活風俗だったり、作家と出版社や家族、読者との関係性だったり、関東大震災だったり、軍や警察が強くなったりプロレタリア文学の興盛など時代の大きな変化を可愛らしい絵柄で丁寧に描いていて面白かった。著者が真面目に資料に当たって書いた誠実な作品という感じ。

あまり個人的に芥川の作品自体に思い入れはなくて、なんとなく孤独で繊細な人みたいなイメージだったのだが、晩年では割と文壇の売れっ子で、仕事はひっきりなしで色んな人が立ち替わり入れ替わりで家に来ていたようだし、現代のスターっぽい扱いだったのでちょっとイメージが変わった。

ラストも割と淡々としていて、それがリアルな感じもした。今の自分と変わらない年齢ということもあって、彼と比較すると抱えているものはあまりにも小さいが、とりあえず自分はまだまだやりたいことがあって楽しく生きていけていることは幸せだと思える。

「アート思考」を読む。

何となく現代アートの生態系みたいなものをざっくり把握して読んでみた。ビジネスマン向けのアート解説という感じでマーケティング的には成功してると思うのだが、なんか読んでてつまらなさを感じてしまった。著者自身が藝大の絵画出身で作家でもあると思うのだが、あまり作家っぽさがないというかアート業界で華やかな実績を残してきたディレクターという感じで、胡散臭さというか上滑りした感じが出てしまっている。アーティストをやたらとビジネスマンと別の思考をする生き物として分けて論じたがるのも違和感を感じたし、デジタルっぽいアートについても語りたがるというか落合陽一みがあるし、多分彼の作品が好きな人とかに刺さりそうな感じもする。

まぁ、あまりナルシスティックな独自の芸術論とか独りよがりでポエミーな主張とかは読みたくないし、ゴリゴリに固いアカデミックな美学に踏み込んだ内容を期待していたわけでは無いので、きちんとビジネスマンと仕事してきた著者としてのニュートラルな解説は展覧会のキャプションを読み続けてるみたいでとても学びになる。彼が本書で扱わない、金にも社会的にも望まれてないアウトサイダーアートのような表現も社会には溢れてると思うが、本書はカギカッコつきの西洋的な「アート村」の成功者の視点で読み解くアート思考として読むのが良いと思う。

内容的にはある程度知りたいことを知ることが出来たので自分としては満足な良書でもあり、変な読後感だった。

「良いコード悪いコードで学ぶ設計入門」を読む。

これも読書会が行われてたりかなり良い評判を聞いていて読んでみたいと思っていた一冊。すごく学びになった。本書の参考文献にも挙げられている、「現場で役立つシステム設計の原則」のような構成で、悪いコードをリファクタして良いコードに書き換えていく肯定を丁寧に紹介したもの。

timit.hatenablog.com

サンプルコードはJavaがメインなのだが、個人的にはrubyでの書き方の紹介が割と多いのが助かった。あと、著者が作ったゲームもちょっとやってみて楽しめた。

game.nicovideo.jp

「もしも、東京」を読む。

全然知らなかったけど去年やっていた東京をテーマにした展覧会の図録。人によってかなり切り口も作品の練り方も表現方法も違うが楽しめた。強いて上げるなら浅野いにお太田垣康男の両氏の漫画が特に面白かった。

久々に黒田硫黄作品を読む。

短編集。「茄子」とか「セクシーボイスアンドロボ」は好きなのだが、本作はあんまり馴染めず。なんというか色んな作品が突拍子もなく展開されるのでうまく消化できず、読んだ後もどんな物語か説明しにくい。一つ一つの作品は色々深読み出来たり含蓄ありそうなのだが、良くも悪くも説明・解説的な描写をしないし、会話劇ならともかくアクションシーンとかはビジュアル的にも何が起きてるか把握しづらいのでなんかよく分からないという感じになってしまった。自分が漫画を読む力自体が衰えてる気もするが。

「達人が教えるwebパフォーマンスチューニング」を読む。

想定通り、めちゃくちゃ勉強になった。実際の過去のISUCONで使われた課題を元に、どのようにパフォーマンスチューニングすれば良いかを解説するもの。きちんとパフォーマンスを計測し、ボトルネックを見極め、コードを読み、修正してまた計測するという当たり前の内容を、達人たちの視点でどのように進めていくかを学べる超良書。

構成がruby+nginx+MySQL+ubuntuみたいな実務にかなり近い環境なので個人的にすごく学びしろが多かった。実際にAWS上にAMIを指定して推奨環境を構築し、githubからクローンして動かしながら読み進めていったので結構時間がかかった。結構上級者向けなので、あまりにも簡単と思われるコマンドや設定変更は省略されてたりするので都度ネットで検索しながら読了した。MySQLにインデックスをつけるくらいは経験あったが、pt-query-digestを使った本格的なスロークエリの分析やalpを使ったログ解析など未経験のことも多くこれから学んでいきたい世界が見えてきた感もあった。

ベンチマーカーを使うのも初めてで、付録にベンチマーカーの実装の仕方の紹介もあるのだが、適切な計測をしつつ、参加者のレギュレーション違反を監視し、適切なエラーを返す、みたいなことを実現していてレベルが違いすぎて慄いた。実際に過去問を何回か解いてみるだけでも相当力つきそうだし、定期的にやってみようかと思う。

ウクライナ戦争の200日」を読む。

今年2月のウクライナ戦争以後、連日出ずっぱりな小泉氏。戦争前は全く知らなかったが、深い専門知識や語り口が面白くてウォッチしていたところ、本が出たので読んでみた。各方面の識者と戦争の今の状況について対談した本。

どの対談もそれぞれフォーカスするポイントが違って面白いのだが、それによって小泉氏の幅広い知識の深さにも感銘を受けた。ミクロな戦術や兵器の分析だったり、戦争を描いてきた創作と現実の比較だったり、ロシアという国の歴史や内情だったり、ロシアと関係の深い中国やドイツとの差異だったり、今後どのような形で戦争が終わる可能性があるか、戦後は国際社会がどう変わるかという予測だったりと本当に幅広い。

本書を読んで読んでみたい課題図書もたくさん出てきたので、技術書の合間に読んでいきたいと思う。やはり学生時代からいつか読もうと思っていたクラウセヴィッツカール・シュミットあたりだろうか。