「空也上人がいた」を読む。
大学生の頃から名作揃いだということを知っていて、でもなんとなく絵柄とか暴力的な作風が好みじゃなくて新井英樹という漫画家のファンではなかったのだが、なんとなく枯れた感じの雰囲気を感じて読んでみた。面白かった!現代日本を舞台にした、登場人物はほとんど3人だけ、しかもほとんどが室内の会話劇というめっちゃミニマルな話なのだが、すごく豊かでリアルな話だった。
最近、少し「老い」について考えることが多い。自分の体も全盛期よりは老いてきているし、親や親戚の老いも当然ながら進んでいる。「廃用身」という作品を知って、原作著者の久坂部氏の書いた老いに関する本も読んだりして、体に起こる変化や出来ることと出来ないこと、老いた人にどう接していくべきかということも学んでいた矢先だったので、この作品で描かれる老いだったり、罪や恥の意識についてもいつもより解像度高く読めた気がする。後書きで新井氏が書いている通り、美男美女が出てこないのがすごくリアルで、登場人物たちはどこか絶妙にダサかったり、疲れが出ていたり、無様に嗚咽したり、衰えた体があったり、生活感が濃厚で人間臭い。
会話劇なのだが、みんな言い淀んだり、噛んだりするの描写も丁寧で、大小のコマをドラマチックに使ったり、派手なカメラワークに頼らない。多分、原作の小説で描写されてるんだろうけど、意味があるのかないのかよくわからない背景が映り込んだり、滑らかなコマ運びじゃないので、マンガなんだけどドキュメンタリー映画とかダルデンヌ監督の作品を見ているような感覚になる。自分がその場に居合わせてしまったような居心地の悪さを感じて、めちゃくちゃ良かった。






