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webエンジニアのメモ

 「起業のファイナンス」を読む。

起業のファイナンス増補改訂版

起業のファイナンス増補改訂版

 

 ベンチャーキャピタルやってる人によるファイナンス指南本。ネットバブルが起きた2000年前からファイナンスを手掛けてきたこともあって、歴史的にも色んな実体験をベースにしていて教科書感がなく実践的だし、なにより文体がフランクで読みやすい。「イケてるベンチャー」という呼び方とかね。その中でまたためになった言葉をメモって行く。

ベンチャーは金融機関からお金を借りるべきでない。収入が不安定な中で月々の返済や目先の利益に翻弄されると本業がおろそかになり大きな経営判断もし辛くなるので、株式で新規調達すべき。株であれば返済の必要もなく、成功して上場した時にキャピタルゲインで株主に還元できる。利回りからいってもベンチャーの投資は借入の利回りより高くないと商売が成り立たないので、VCとしても「ハンズオン」といって経営に口出しして上場に持って行くためのインセンティブも発生する。起業家も、辛い時もイケイケな時もVCと一緒に頑張ることになるので、ある意味恋愛や結婚相手を決めるように慎重にVCを決める必要がある。

・ただ、素性のわからない人を株主や取引先にすると、上場時に反社が判明したりしてそれを理由にはねられる危険もあるので、やたらめったら株主を増やさないのが良い。知り合いの知り合い、とかは危険。なるべく少人数にしておくべき。

・日本では個人資産は半分以上が貯蓄のため、一度銀行を介して企業への融資が発生するが、アメリカでは個人が直接株主となって銀行を経由せずに資金調達する環境がある。

シリコンバレーと比べると、チャレンジャーがひっきりなしに登場する環境ではないので、ある意味売り手市場である。アメリカでは投資が受けられなくても、日本でなら受けられるという可能性もある。

・冷静に事業を分析すると失敗する確率の方が高くても、起業する人はパッションを持って起業する。

・法人化するのは、まだ赤字かほとんど利益が出ていない段階で行うのが良い。

・資本金は本来「債権者が資金を回収しやすくするためのバッファ」であり、資本金が大きいほど配当できない財産が会社に多く残るので、資本金が大きいということは債権者にとって有利。要は銀行にとって有利なのであって、ベンチャーによって資本金が大きいことで得になる要素はあまりない。税金も高くなるし。

・資本政策は早めに考えておくべし。「どのような株主に、いくらの株価で、何株分の株式やストックオプションを割り振るか」考えること。後になればなるほど修正に金がかかり、取り返しがつかなくなる。一度薄まった持ち分は二度と高まることはない、と考えておく方が良い。せっかくいい事業なのに、初期の資本政策の誤りが響いて事業展開の芽が絶たれたケースは多い。過半数なのか、1/3なのか、20%なのか、割合によって決議出来ることも変わってくる。

・事業計画は決まったフォーマットはないが、なるべく定量的な言葉で具体的に書くべし。銀行に出す事業計画とは少し性質が異なるという点も考慮すべし。

・今のトレンドとしては、5~7年で上場するような計画を立てて、上場時に時価300~500億位になる事業が一般的。

・DCF法(割引キャッシュフロー法)によるデューデリ企業価値を算定。

・マクロ経済の動向を理由に投資されないことを嘆くベンチャー経営者はナンセンス。創業期のベンチャーの事業規模はマクロ経済の影響などほとんど関係ない。

ストックオプションは、上場後にすぐに辞められないように100%実行できるのではなく、数年で段階的に行使出来るような仕組みになっており、クリフ(崖)とベスティングと呼ぶ。

・日本のベンチャーの上場は「早産」になるケースが多い。株主から早く上場しろ、とせっつかれるパターンが多いため。