midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「ベストセラー小説の書き方」を読む。

ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫)
 

なんで読もうと思ったか忘れたけど、いつの間にか図書館で予約していて届いた本。面白かった。タイトル通り、「いかに本を売って多くの人に読んでもらえるか」ということを第一の目標としており、正直な筆者の文体も相まって、新人作家への熱いエールもあり、エンタメ路線で楽しめる。何となく、小林よしのりっぽい感じを受ける。

内容は大きく二つに分かれていて、小説を文化や産業の中で捉え直す試みと、実際の作劇論や文体のレベルで自作の小説を例に挙げつつ(自身のテクニックを自慢も含めながら)分析し、こうすべしと指南する試み。

前者はそれこそ作者が若い下積みの頃に毎日色んな小説を読みまくり書きまくって何とか暮らせるようになってきたという話だったり、刊行当時の1981年と比較すると大分変わった点はあるが、出版社や編集者との付き合い方やペーパーバックいくらで売って印税がいくらで、みたいな作家として生き延びるためのハウトゥーとして楽しめる。

後者は結構「べき論」が語られるので必ずしもそうじゃなくない?という点もあるのだが、プロットを重視し、キャラクターや世界観を練り上げて結末まで読者を飽きさせずに楽しませるという書き手であれば凄く役に立つと思う。

・小説の目的は読者とのコミュニケーションであり、作品が読まれなければ当然その目的も達せられない。

・芸術が啓蒙的でなければならないとか、宗教的な教義を信望する必要があるとか言ってるわけではない。だが、(略)人生をより良く楽しく耐えやすいものにしてくれる力がなければ、芸術に何の価値があるか。

・「わたしは才能を売ることはしたくない」ということばこそ、独善と傲慢の見本である。

・テレビの脚本は純粋には芸術とは言い難い。(略)テレビでものを書くということは、雑多な構成員の集団で作業することになる。

・それ(テーマ)が第一の目的になってしまっては、作家は小説ではなくて、エッセイか説教を書けばよいことになる。

・タイプで物語の糸口をいくつも叩いてみよう。

・最初の3ページが勝負だ。(現代のサブスク全盛音楽とも通じる)

・作家は文章にリズムを与えることを学ばねばならない。

・「予告」という文体上のテクニックを使わざるを得なかった。(略)物語の中で起きる事件は、決して作者から直接話す形で予告されてはならない。

・相次ぐ困難によって主人公を追いつめよ。(略)決して原稿を水増しするために用いるべきではない。

・終わりに近づいたら、小説のスピードを上げたまえ。(略)最後の15ページを息もつかずに読んでこそ、読者は本を置いた時に満足感を得るのである。

・本のテーマはプロットによって暗示されるべき。

・アクションのないプロットはガーリック抜きのパスタ

・作品を最大限面白くするには、著者は可能な限りアクションと性格描写を結びつけるべき。

・「老人と海」に簡潔さを学べ。→ことばは少ないほど良い。

・(人称について)複数の視点から描くと厚みと幅が生まれる。1人称のメリットは主人公に共感しやすい点であり、ジャンル小説向きである。

・作家が本当に売らなければいけない唯一のものが文体である(略)われわれは古い物語の要素を新しく配列しなおしているだけなのだ。