midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「永遠の仮眠」を読む。

永遠の仮眠

永遠の仮眠

 

 メロ夜でおなじみのKCこと松尾潔氏の初の小説。かなり自伝に近い作りとなっており、小説家としてのアプローチは芸人でもある又吉直樹氏と近い感じ。まぁ数十年に渡って芸事を本業にしてきて、一番社会の中でリアルで血肉の通った物語を紡ぎだせる分野であるだろうから武器として使って特に異論はなし。本書も悪く言えば読む前から想像の範囲内で収まる物語であったことは否めない。

内容としては業界の力関係に悩みながら創作する音楽プロデューサーの話で、プロットや演出が凝っているわけではないし、文章が上手いわけでもない。もし松尾潔作ということを知らなければ、良く日本の歌謡曲の現場を取材して書いたなぁと感心するかもしれないが、「なんとなくクリスタル」的に全体的にお洒落で鼻につくようなブランドやアーティストの固有名詞が多いので微妙だと思ったかもしれない。でも、作中人物たちが色んなモデルを想起させる作りになっているので日本のR&B好きには楽しめるとは思う。それ以外の人にはお勧めしにくいかも。