midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「なめらかな世界と、その敵」を読む。

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

 

すごく評判になっていたし、大いに思考を刺激された「なめらかな社会とその敵」っぽいタイトルだからそういう社会を踏まえた作品なのかなと思ったらそうでもなかった。面白いっちゃ面白いんだけど、あまり肌に合わなかったというのが正直な感想。

 

現代日本から明治時代の日本、ソヴィエトだったりと色んな世界を舞台に、それぞれの背景を踏まえたSF的な想像力で描き上げる物語はどれも巧みだと思う。コンセプチュアルで完成度の高い短編集であることは間違いない。ただ、表紙の絵からしてその世界観が表れているというか、全体的に美少女アニメっぽいというか「君の名は」っぽい感じが苦手だった。「放課後のプールに飛び込む2人の少女」とか「世界有数の頭脳を持つツンな人格と主人公のことを無償で愛するデレな人格を持つ少女」とか「超能力を持つソヴィエトの7歳の無口な少女」とかそういうイメージ。本作の最後の収録作品「ひかりより速く、ゆるやかに」は正にああいう「恋愛と青春とSFと」という感じで、爽やかで疾走感もあって面白いんだけど、肌に合わない感じが残る。作者は自分と同年代で日本育ちの男性でSF好きという共通点があるんだけど、何というか、向こうはビジュアル系ロックが好きそうな感じでこっちはヒップホップが好きな感じ、という好みの違いだろうか。短編全てに渡って、会話がいかにも「ごめんあそばせ」的にスカしてるというかかしこぶってる感じなのも読んでて興味を削がれた。作者がインタビューで語っていた「SF的な事象をいかに視覚的に面白く魅せるか」というのは成功してると思うけど、例えば小川哲「ゲームの王国」のような泥臭さやいかがわしさみたいな要素の方がどちらかというと好みだなと思った。