midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「ラウリ・クースクを探して」を読む。

著者の宮内氏は以前「スペース金融道」を読んで面白い書き手だと知ってウォッチしてたのだが、最近エストニアを舞台にした作品を書いたと知って読んでみた。実物を手に取ってみて、200ページちょっととかなりコンパクトな内容で驚いた。ソビエト時代のエストニアに生まれたプログラマの半生を数奇な歴史の流れを踏まえた描いた作品。

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プログラミングに関する専門用語は出てくるが、メインではないので現代の歴史小説という内容で、SF感を求めて読むと肩透かしを食うかもしれない。エストニアの国の成り立ちや技術に対する議論も出てくるが、それよりは政治体制によって引き裂かれた友情や文化の話が物語の主軸となる。ブロックチェーンやサトシ・ナカモトの話も出てくるがラウリが実はサトシ・ナカモトで、みたいな歴史のifを描いた感じでもなく、ラウリを初めとした才能を持った登場人物たちのその後も割と普通なのがリアルで面白かった。映画「30年後の同窓会」みたいで哀愁溢れる物語。