midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「スペース金融道」を読む。

スペース金融道

スペース金融道

 

 「ナニワ金融道」のSF版という感じ。今より数世紀先の未来、人類が太陽系の外にまで移住可能になり、アンドロイドや人口知能たちと共生する社会を舞台に、高利貸しの主人公があらゆる債務者からも取りたてを完遂する、というもの。最新の金融工学量子論、エンジニアリングなどの豊富なSF的なガジェットで話は成り立ってるんだけど、基本はナニワ金融的なニヒルでキレる上司と振り回されるダメな僕(とはいえプログラミング能力がとても高いのだが)、というデコボココンビのバディものであり、文体もダメな主人公の一人称で軽く、取り立て前のお決まりの口上があったり、全体的にポップで楽しめた。映画とかアニメ化出来るんじゃないか?という位にキャラも立ってるし。

アンドロイドの人権問題で公民権運動が盛んという設定や人間原理主義政党(明らかにヒトラー意識)の擁立など政治的な設定は現代との比較で示唆的だけど、ちゃんとエンターテイメントしてる。細胞内で発達したミトコンドリアによって宿主?というか意識を強制的に交代させられて驚異的な身体能力を発揮するという「寄生獣」みたいな話とか、脳にナノマシンを埋め込んで認識を差し替える動きをさせることで人間を仮想現実に送り込む技術とかが特に面白かった。

話は一話ごとに独立しており、本書内でのアンドロイドの新三原則などの説明は都度されるのだが、それぞれ必要なタイミングでなされるので特に煩わしくも感じない。なんでこんな面白い作品や著者を今まで知らなかったのか不思議なくらいだ。