midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

ノイマンゲーデルチューリング」を読む。

先日読んだ「エニグマに挑んだ天才数学者 チューリング」に引き続き。ノイマンゲーデルチューリングという3人の天才の重要な講演や論文について紹介しているが、ガチガチの論理学徒・数学徒向けじゃなく、歴史学的にも社会学的にも読める面白い一冊。

著者も冒頭で紹介している通り、3人の講演や論文がそれぞれの性格や考え方も表現していて面白い。読みやすく、簡潔でありつつも感情を感じるのがノイマン。実利的で口も世渡りもうまかったという性格通りという感じ。理論物理学者が問題を解決するためというアプローチで研究対象を選ぶのに対し、数学者は自分の審美で選ぶから芸術家的になりがちだよね、みたいな説明があって、広大な科学全体に対して最高峰の天才が語るとなるほど、そういう風に見えるのかと感心したりできる。頻繁に自宅でパーティを開き客と語り合っていたみたいなエピソードもあって、そういう姿が目に浮かぶ。

ゲーデルは日本語文で説明するのがかなり困難なほど細かく難解で読みにくい。真摯に筋道立ててきちんと説明しようとしてくれているのは分かるが、気を抜くと何について述べているのか見失いそうになる。彼の不完全性定理を導き出した施工過程を辿れる感じがして楽しいといえば楽しいが、どこまでも根源・基礎を疑い、どの公理系や言語から遡って矛盾なく証明可能な数学を始めることができるかみたいな説明が続く。さらに、人間が認識可能な論理規約が時空のどこまで適用可能かみたいな壮大な説明はSF的な想像力も刺激される。文章から本人の育ってきた文化や感情的なものを感じにくい。学者としても、天才なのは確かなのだが大学のちょっとした事務的な仕事も完璧に理解しようとする余り効率的な仕事が出来ずトントン拍子の出世とは行かなかったとかいうエピソードの紹介があり、納得感がすごい。かと思えば、一見性質的には真逆に感じる、夜の街で活躍したダンサーの女性と結婚して終生仲良く暮らしていたというのもよく分からない。どういう会話してたんだろうか。

チューリングは例えがうまくて思ったより社交性を感じた。専門家向けでない一般人に向けての文章ということもあるが、自分が述べたい事を効果的に伝えるために当時の世相や文化も交えて「こう考えてみたらどうだろう」的に提案し導いてくれるような文章となっていて、他人に馴染めないとか奇行エピソードも知られてる彼のイメージからするとちょっと意外だった。50年後にはチューリングテストしてほとんどの人が気づかないレベルの機械ができてると思うとか、機械学習を繰り返すと外からはどんなロジックで判定されたかがブラックボックスになると思うなんて大胆に予想していてすごい。ただ、アメリカ人をこき下ろしてたり自分の嫌いなもの・ことに対してはあまり許容できない人だったんだろうなぁというのは感じた。