midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「異彩を、放て。」を読む。

コテンラジオの障害の歴史の中でゲストとして参加していたヘラルボニーの社長の話を聞いて興味を持ち、twitterのフォローを始めて面白い活動だなと再認識して著書も読んでみた。双子の著者自身の生い立ちと、ヘラルボニーという会社による社会実験の記録といった感じの本。

色んなコンテクスト踏まえて大体著者自身の問題意識とか共感できるだろうなと予測はしていたので、個人的には障害者の作成したアートをどのように位置付けてるんだろう、というのと株式会社としてゴリゴリの資本主義の中で作品をどのように売り出して成功してるのだろうということが知りたいなと思っていた。

前者については、本書の中で紹介されてるるんびにい美術館の板垣さんという方の解説が面白くて腑に落ちた。要約すると芸術の体系や技術を学んだ美術家と知的障害のある美術家とでどのような作品の違いが出てくるか。大きく違うのは芸術の体系や技術を学んだ美術家は社会の中で自分の作品がどんな文脈に位置づけるか、ファンや画商など人間の関係性を調整しながら作品を作るのに対して、知的障害のある美術家は自分を楽しませる表現を突き詰めるかどうかというところが違うのでは、とのこと。表現の始まりは特に両者に差はなくてただ楽しかったり、自分を納得させるためにしていることが知的障害のある美術家はずっと自分のために作り続けるので面白い表現に到達するケースがあるのではというのはかなり納得感がある気がするし、両者に序列がなくて良い考え方だなと思った。

後者についても、かわいそうな障害者が作った格安の作品、という売り方はせずにかなりクオリティにこだわった高級路線でモノづくりをしていて、ブランディングマーケティングも上手くて納得した。双子の兄弟がまず非常にファッショナブルなこともあるけど、プロダクトもおしゃれで個人的にもカッコいいなと思える物が多く、障害者に対するお情けとか寄付感覚で買ってあげようかなみたいな気分にならないのが良い。また、作家たちは不当に搾取されてないか、なんていう一抹の不安もあったんだけど、作品の一部をトリミングするなどの作家が望まない形でのプロダクト制作はしないし、効率や売り上げのために無理やり作らせるということもなく、作家をリスペクトしながらマネジメントするような仕事をしてる、というような言い方をしていて共感できた。