midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「澄江堂主人」を読む。

晩年の芥川龍之介を描いた漫画。なぜか芥川を含めて周囲の文豪たちの職業が小説家ではなく漫画家になっていて、漫画家とすることに何か大きな意図があるのかと思ったがその意図が汲み取れずよく分からなかった。ただ、芥川自身の悩みや不安を中心に、大正から昭和にかけての当時の日本の生活風俗だったり、作家と出版社や家族、読者との関係性だったり、関東大震災だったり、軍や警察が強くなったりプロレタリア文学の興盛など時代の大きな変化を可愛らしい絵柄で丁寧に描いていて面白かった。著者が真面目に資料に当たって書いた誠実な作品という感じ。

あまり個人的に芥川の作品自体に思い入れはなくて、なんとなく孤独で繊細な人みたいなイメージだったのだが、晩年では割と文壇の売れっ子で、仕事はひっきりなしで色んな人が立ち替わり入れ替わりで家に来ていたようだし、現代のスターっぽい扱いだったのでちょっとイメージが変わった。

ラストも割と淡々としていて、それがリアルな感じもした。今の自分と変わらない年齢ということもあって、彼と比較すると抱えているものはあまりにも小さいが、とりあえず自分はまだまだやりたいことがあって楽しく生きていけていることは幸せだと思える。