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webエンジニアのメモ

 「暗号通貨VS国家」を読む。

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

 

 「多数決を疑う」がめちゃくちゃ面白かった坂井氏の著作。細かな技術的にどう実装するか、という話まではいかないが、サトシナカモトや暗号通貨の思想だったり、合意形成の方法の面白さと自由や国家の在り方まで突き刺して論じるという一般書としてはとても面白い内容となっている。冒頭から、ビットコインには世界から戦争を無くそうという意志が添えられている、なんて話が展開されていてエモい。戦争にかかる費用は通貨の増発や国債の発行で賄われる例が多いが、法定通貨の価値が下がると戦費の調達が難しくなる、と。最近読んだ以下の記事なんかも思い出しつつ、大いに楽しめた。ちなみに、サトシナカモト論文は既に5000件を超して引用されており、正体が分かればノーベル経済学賞が狙えるレベルであるらしい。

僕がWinny開発者「金子勇」氏がビットコイン開発者「サトシナカモト」であると確信している理由 – Life For Earth

・中国の国家情報法など、全ての生活上の行動がトレーサブルになりつつある昨今でも、国家も企業などの第三者を間に挟まない、P2Pでの取引。

・Swift全銀協のネットワークを使わず、最も安く早く送金ができる。

・匿名のアドレスで管理されるので、徴税も出来ない。「メガ数独」と言われる、PoWによる改ざんの難しい仕組みの実装。イーサリアムにおけるPoSの考え方。

・ヴィタリクが考案したスマートコントラクトによる、ルール発動の条件が揃うと自動的に、トラストレスで取引が実行される仕組み。イーサリアムのプログラム上では、例え「盗まれた」としても、盗んだ人の所有権を守るというほどの強固である。

トークンは遊園地を建てる時に売り出した前売り入場券のようなもの。

・フォークしたコインとの関係は調整ゲームの要素があり、多くの人が使う規格が勝つというナッシュ均衡が起こる。

また、ビットコイン界隈の人間模様も面白かった。中央管理者がいないため、みんなで民主的にブロックチェーンの仕様を考えて運営していく必要があるが、考えの違い方からハードウォークする例だったり、制度も発展途上だという。経済学のインセンティブ設計の大家がブロックチェーンのスタートアップのアドバイザーに就任したり、優秀な頭脳が集まりつつあるという。