midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「人と動物の関係を考える」を読む。

図書館でふと視界に入り、一目ぼれして読んだ本。ここ1,2年は特に「人間とそれ以外の知性」について考えていることが多かった。AIだったり、進化した類人猿だったり、ニュータイプだったり…。後ほど読書録は書こうと思うけど、直前に読んだ「サピエンス全史」の影響も大きい。ホモ・サピエンスは1万年くらい前から野生動物を家畜として生活圏内に取り入れ(または逆に、動物たちの餌場としてサピエンスの生活圏に侵入され)、歪な形ながら今日まで「共生」してきているけど、現在の日本においては色々な矛盾が生じてしまっているという現状を各専門家が縦割り行政や学会の壁により知識の共有が測れず、著者の打越氏が中心となって動物と人間の関係を研究する人・現場のエキスパートを集めてシンポジウム形式でお互いの知識共有をした場をまとめて著書に起こしたのが本作。

大きく分けると5章編成で、それぞれ「実験動物」「畜産動物」「愛玩動物」「野生動物」「動物園動物」の専門家たちが集まり、お互いの研究実績や課題・問題を共有する。

個人的に一番インパクトあったのは序章でもある「実験動物」だろうか。「人類が一番恩恵にあずかっているのに、一番身近でない動物」というキャッチフレーズだけでも心打たれた。実験動物は寿命を迎える前に「人間の手で殺される」ことが決まっているけども、3Rという考え方や国際的な批准が遂行されるanimal welfareの考え方もすごく参考になった。これ自体が非常にエゴイスティックというか人間中心主義的な考え方なんじゃねーの?といぶかって読んでたら、「死を意識することのない動物にとっては安楽死はそれほど苦痛でないのでは?」みたいな面白い考えも出ていて刺激を受けた。他にも、畜産動物たちもきちんと感受性を持っていることが研究の成果で明らかになっており、最終的に解体して食うにしても苦痛を軽減させてあげるための取り組みを世界的に実践してその普及に専門家が尽力していたり、保健所で預かる動物の「殺処分ゼロ」ってホントに人と動物にとって幸せなのか?みたいな問いとか「動物園は人のためのものか?動物たちのためのものか?」みたいな問いとか、実際にその手で命を奪ってきた専門家たちによる苦悩とかちょっと涙が出そうな位重たくて、食べてきたものや自分が飼って死なせてきた動物を思い返して自分の関係性を改めて問い直したくなった。

ただ、専門家自身からも指摘されている通り、勿論本書でも紹介しきれていない議論はあって、水産資源としての動物が本書では抜け落ちていたり、やはり動物を含めた未来の「知性」とホモ・サピエンスをきちんと比較する議論が欲しかったなぁとは思う。