midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「東京芸人水脈史」を読む。

多分ニューヨークのyou tubeで知った「山田ナビスコ」という名前。若手の東京芸人を長年定点観測していたそうでちょっと気になっていた存在だったので本を出したと知って読んでみた。正直、残念な仕上がりだった。

あまり良い評判を聞かないラリー遠田といった批評家としての分析力や、古今東西のコメディ全般の歴史に関する知識や教養がある訳でもなく、あくまでも叩き上げで若手芸人の芸を見続けてきた人、としては真っ当なのかもしれないが、予想よりも文章がかなり緩くエッセイ的だった。分析力だけが取り柄というような自己評価を本文中でしてるけど、だとしたら自分がかつて関わってきた仕事の年月日などの基本的なデータベースはせめて本にする以上は裏取りして事実関係に齟齬がないか押さえておくべきだと思う。ほぼ全編を自分の曖昧な記憶ベースや印象で語っているような文体なので、昭和のスターが書いたどこまで本当か分からない自伝を読んでたり居酒屋の酔っ払いの話を聞いてるような感触がある。本書には写真も図も挿絵も注釈も出典情報もない。芸人および自分の生い立ちや仕事についてゆる〜くエピソードトークを繰り広げるだけという感じで、若干業界に対するダメ出しというか説教感もあるのがきつい。自分との関係性をわかりやすくするため、と冒頭に宣言してはいるものの、芸人やコンビ名にさんを付けてたり略していたりするのもあって何を指しているのかが非常に読みにくい。お笑い関係者だけが読むことを想定しているのか、内輪感が強い。

お笑い理論を持っていてそれに当てはめてネタを分類・分析する、みたいな研究者的な手法も取っている訳ではなさそうで、単純にかつて自分が見たことのあるネタに関する記憶を元に笑いに関する自分の好みで若手のネタにダメ出ししてるらしい。これだったら、you tubeで見たことあるnon styleの石田やパンクブーブーの佐藤といった現役漫才師によるネタ解説とかの方がよっぽど芯を食っていて納得感あるのではと感じた。自分が若手芸人ならあまりこの人を頼りにしないだろうなという。