midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「<敵>と呼ばれても」を読む。

「アジアンドキュメンタリーズ」という配信サービスがあって、予告編を見るだけでもとにかく面白そうで引き込まれるドキュメンタリーが多くて入ろうか検討してるのだが、数が多いので最近の仕事のペースだと全然見切れないだろうなと躊躇している。
応援するという意味でサブスクリプション登録するのもありなのだが。

ドキュメンタリー映画|アジアンドキュメンタリーズ

そんな中、ドキュメンタリー的なバンドデシネで味わおうかと思って読んでみた一冊。面白かった。著者のことは全然知らず、本書の後半になってからスタートレックで有名となった俳優さんということを理解したのだが、wikiとかを読んでも波瀾万丈な人生ですごい人だなぁと感心した。内容は、日系2世のアメリカ人であるジョージ・タケイ氏が幼少期の頃の第二次世界大戦で「敵性外国人」と判定されて特殊な生活をしていた時のルポのような作品。

前半は住んでいた家を追われて、強制的に粗末な収容所に隔離されるまでの経緯と当地での生活について子供の視点で描かれており、不安で仕方ない両親のことも顧みずにそれなりに楽しく過ごしているのが可愛らしくもあり残酷でもあってリアルだと思った。特に終戦を迎えて外に出られるとなった時にも、小さな子供たちにとっては逆に収容所の方が「おうち」になってしまっていて両親を困惑させる場面とかは印象的。

大人目線でも面白くて、祖国から<敵>と見做されたことで日系アメリカ人としてのアイデンティティが揺れに揺れて、日本を賛美する者が出てきたり、逆にアメリカ兵として危険な戦地に向かう者が出てきたり、アメリカ人としても市民権を捨てる/捨てないで揉めたりとそれぞれの思考に共感できるのだが、さらに家庭の状況や身の安全をどう確保するかという複雑な変数もあってもし自分だったらどう行動するだろう?と色々反芻しながら読んだ。ご両親の間でも行動が別れたりもするんだが、その思考過程を理解すると本当に家族思い出誠実で素晴らしいなと胸を打たれる。

漫画として構成や演出のまとまりが良く読みやすいのはもちろん、日本の漫画に慣れた人間でも割ととっつきやすい絵柄だったのも意外だった。最近の作家さんはもちろんmanga絵にも慣れているからとは思うが、顔のデフォルメの仕方とかコマ割りとかに日本的なmangaっぽさを感じたのも印象的だった。