midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」を観る。

 以前読んだ「スタジオの音が聴こえる」で紹介されていたドキュメンタリーが本作。非常に胸熱なストーリーで楽しめた。アメリカ南部、アラバマの田舎町でサザン・ロックの名盤や伝説的なソウル、ファンクのレコーディング裏話などを知ることが出来る。スタジオのオーナー、リック・ホール自身の個人史に始まり、アレサ・フランクリンローリング・ストーンズウィルソン・ピケットやパーシー・スリッジやクレランス・カーターなど、超ド級の大物が語るその場にいた人間にしか分からない数々のエピソードが凄い。データ化出来ない、その場での緊張感とかフィーリングって大事。そして、本作が公開されて以降、彼らが次々に鬼籍に入っているということもあって、より一層貴重なインタビューとなっている。

証言の合間に挟み込まれる、朴訥としたリックの現在の牧場での暮らしぶりとか、メンバーたちがテネシー川で犬と散歩してたりとか南部の美しい景色も印象的。

timit.hatenablog.comよくある音楽ドキュメンタリーだと、「栄光から衰退まで」描かれるのが通例だけど、本作ではあまり衰退が描かれないのも良い。唯一語られるエピソードが、「ジミ・ヘンドリックスの音楽が俺たちを過去のものにした」みたいなもんだろうか。スタジオバンドでもあるスワンパーズの他スタジオへの引き抜きとか辛い話もあるんだけど、リック自身が「時が変われば感じ方も変わる」と言うように、色々あったけどお互い同じ時代を生きてきた戦友だし、みたいな感じで美しく描かれてる。

そして、言葉にするとチープになってしまうが、やはり人種や国境の壁を超えて創作に当たっていたメンバーたちの生き生きとした表情が魅力的。スタジオ稼働の当時、公民権運動が盛り上がっていたとは言え、一緒にダイナーでシンガーとバンドメンバーが飯食ってると、周囲の客から異様な視線で観られた、みたいな証言も重い。

 後は何より、音楽の力。今聴いても、こんなにカッコよいか!と興奮が止まらないタイトな映像の数々。特にウィルソン・ピケットのシャウトが響いた。最高。