midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

イーハトーブ農学校の賢治先生」を読む。

宮沢賢治が教師だった時代のエピソードを集めた原作を漫画化したもの。面白かった。

個人的な宮沢賢治の出会いは小学生時代に銀河鉄道の夜を読んだのことなのだが、切り絵が目が覚めるくらいにめちゃくちゃ綺麗だったことと、ジョバンニとカンパネルラがなんとなく同性愛っぽくて違和感を感じたことと、「世界平和」みたいな単語が出てくるのでなんとなく宗教っぽいなと思ったことくらいが印象に残っているくらい。

他にも教科書で彼の短編を読む機会はあったが、「わけわからん擬音とわけわからん筋書き」みたいなのが印象に残っていて、正直ファンではなかった。低俗な作家ゴシップなので、「生涯童貞だった」みたいな文章も読んだことあったし、早世していたこともあって、イメージとしては一瞬だけ煌めいた生活感のない超芸術家みたいな感じ。

ただ、本書を読むと大分その印象が変わった。ITエンジニアとして在宅で仕事している自分よりよほど生活力も体力もあり、朗らかで学生を始めとする周囲に対しても影響力のある人なんだったんだろうなと思ってカッコ良いなみたいな印象も持った。

割と耽美主義的というか芸術至上主義みたいな人なのかと思っていたが、本人は岩手の生まれで、頭でっかちにならずに農民として技術をつけながら風土の中で生きること自体が理想という描かれ方をしており誤解だったのかなと思ったり。誇張する必要の無い賢治の生徒たちの生の証言を元に作成されていることもあり、事実なんだろうなと思う。当時の先生は授業だけ共通語で普段は方言で話すというのも面白かった。共通語と方言がそれだけ違ったんだろうなと思ったり。

あとは、やはり賢治が亡くなる年にあと数年で自分自身が近づいていることもあって、どれだけの作品を残せるのかというのは否応なく考えた。教師という多数の人と関係を持てる職業では無いので、死んだ後に自分を覚えてくれている人は仕事や遊びで関わった少数の人とネット上に残した曲やコードだけになる。賢治みたく国民的な作家になる可能性はもちろん今の所ゼロだが、自分が残せるもの、というものにもう少し意識的に生きた方が良いかなと思ったりした。