midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

ペルセポリス」を読む。 

 面白かった。中東社会に生きた著者の自伝的コミックということで、どうしても「未来のアラブ人」を思い起こすがどちらも面白い。本書の場合は子供から大人へと成長し、イランからスイス、ドイツ、フランスなどを渡り歩いて、多感な時期にアイデンティティクライシスに陥る姿も克明に描き出している。

本人としてもなかなか振り返るのも辛かったであろう、騙されたり悩み苦しんだりかっこ悪くもがく様を描くのはシンプルにすごいと思う。家族や友人だって読むだろうに、ドラッグ中毒になったり自殺未遂をした話すら描いているのだ。

とはいえ、全体的には80〜90年前後のイランやヨーロッパの生活描写が楽しい。もちろん、イラン革命やイラン・イラク戦争が起こったことによる悲劇的な描写もあるのだが、絵柄も白黒の可愛らしい感じなので全体的にはユーモラスに読める。ヨーロッパに旅行に行った両親が、持ち込み禁止されている娘の好きなバンドのポスターを税関でコートに縫い付けて帰ってきた話とかはリアルでほっこりするエピソードだ。マイケルジャクソンが好きだったり、パンクにかぶれたり、保守的でかつ矛盾したことを言う先生に歯向かったり、話せる友達がいなくて読書に励んだり、勉強を頑張ったり、主人公のマルジが可愛いくて共感できるのが良い。

惜しいのは結構中途半端な形で終わってしまうことだろうか。自伝的なマンガなので大きな事件やミステリー風に描くのは難しいだろうが、せっかくだったらマンガを書くに至るまでの経緯まで描いて欲しいなと思ってしまった。