midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「未来のアラブ人」を読む。

  やっとシリーズ3冊までを読めた。著者の生きてきた1980年代のフランス、リビア、イラン、サウジアラビアレバノンなどの周辺国の生活をリアルに感じ取ることが出来る、自伝漫画。

吾妻ひでおの漫画ではないけど、本作で淡々と描かれる国々の描写はエグい。子供目線というフィルターはあるが、見せしめに処刑された人間だったり、娯楽として犬を殺すような人たちの描写も余すことなく描かれる。主人公のリアドは聡明な少年だが、周囲に溶け込むために時として差別に加担するし、同時に自身も差別を受ける。このあたりの関連性の複雑さがリアルで面白かった。実名で独裁者たちの名前も出てくるし、彼らに対して、生活の場を通したリアルな感情の吐露が見受けられるのも本書の価値だと思う。

ほとんど同じ場所に育った自分でさえアイデンティティが揺れる十代にこんな環境で育てば、自分の核が見えにくくなることは間違いないし、強い言葉で自分を措定する言論に落ち着いてしまう可能性は高いかもと思ってしまう。

両親でさえ、不仲な場面は見せつつも、何とか互いを思いやって夫婦関係を成立させている。お互いのコミュニケーションは出来るが、互いの親族とは十分にコミュニケーションが取れない。そして、両親の親族の考えが反目しているという現状もある。という、親目線でも異文化結婚の難易度の高さを感じた。