「八九六四」を読む。
中国で89年に起きた民主化運動について、様々な立場の人間の現在をインタビューでまとめたもの。事件と現在の中国という国が立体的に見えてとても面白かった。
色んなインタビューがある中でも、傾向として当時の参加者でさえ過去の運動をそれほど評価してない向きがあるのが意外だった。当時のスーパーエリート大学生や知識人たちでさえ、それほどガチな運動ではなく何となくのノリで参加していた節が大きくあり(これは映画の69を思い出す)、浅はかだったと思っている人が多いようだった。そして何より、文句がつけづらいほどその後の中国が民主化しないままでも飛躍的に豊かになってしまったという側面も大きいようだ。彼らのようなエリートがその後中国の内外問わずゴリゴリに出世して金持ちになったりする側面、逆に運動当時は田舎に住んでいて全く全貌を知らなかった地方の一般庶民がその後のネットというツールを使って民主化運動に急速にコミットし、亡命したり逮捕されたりと激動の人生を送っていたりして面白い。
かつて運動を指導したリーダーたちも現在の立場は様々で、現在も変わらない思いを持ち続けるものもプライベートの問題などで身を持ち崩したものもいて、それぞれが自分の若い頃に果たした大きすぎる運動の責任を感じながら生きている感じは、RPGで円ディングを迎えた後の主人公の50歳の姿、という感じで面白かった。