midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「三体」を読む。

三体

三体

 

 冒頭の血生臭い描写にちょっと驚き、中盤はちょっとダレたけど、怒涛の後半がめちゃくちゃ面白くて一気に読んだ。アジア圏で初めてのヒューゴー賞を受賞した中国SF三部作の第一弾。大森望による本書の作品としての受容のされ方や内容を含めた解説が端的にまとまっていてそれも面白かった。さらに、本作が序章に過ぎないというワクワク感まで煽ってくれるので宣伝的にも良い。

内容的には結構ハードSF寄り(扱われるSF要素としては、タイトルでもある三体問題を始めとする数学知識や物理学知識、量子論やコンピュータ知識など幅広い)なんだけど、唯一まったく科学的な知識を持たない不良警察官・史強のキャラがマンガっぽくて良い。主人公であるナノマイクロ研究者・狂潔とのデコボココンビが物語にバディムービーっぽい軽やかさやうねりを出しており、この二人の考案した、終盤のある「作戦」が作品内でとても大きなタカルシスをもたらす。あと、幽遊白書の仙水みたいな「人間に絶望するキャラ」であり、「生命の共産主義」を唱えて一大組織を形成するマイク・エヴァンズだったり、文革を始めとする政治の荒波に抵抗しながら何とか生きた文潔が、科学者として人類を犠牲に捧げる決断をする描写は「ベルセルク」のグリフィスのようでぞくぞくした。こういう思考、自分も辿ったことあるなーと思いつつ。