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 「荒潮」を読む。

荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 作者:陳 楸帆
  • 発売日: 2020/01/23
  • メディア: 新書
 

 著者は長編は本作が初という陳楸帆氏。「三体」の劉慈欣氏も激推しの中国SFということで読んでみた。実にポップでエンターテイメント性溢れていて面白かった。近未来の中国、住民のほとんどがゴミ処理産業で生計を立てる「シリコン島」を舞台に、アメリカから環境コンサルの仕事でやってきた青年と現地の最底辺の環境で汚染されたハイテク資源ゴミを処理して生活する少女の出会いから始まり、中国とアメリカの軍事的、経済的な巨大な陰謀に巻き込まれていく姿を描いた作品。

前半は正直読みづらかった。誰が主人公なのか分かりにくく、登場するキャラ達の本音と建て前が掴みづらい。ヒロインである米米が出てきてから少しずつ物語の本筋が見え始め、前半の伏線が回収されていきラストの一大バトルに急激になだれ込んでいく。読み終わってみるとすごくヒーローがヒロインを守ろうとするオーソドックスな物語で、一瞬で人をミンチにできる超強力な外骨格、サイボーグ化して義眼を持つヒーロー、ウィルスに脳を侵されて2重人格となり、他者にハッキングしたり地域のインターネットをコントロールしたりと超人的な能力を身につけるヒロインなど、すごくアニメ的でビジュアライズしやすいガジェットが沢山出てくる。途中から読んでいて米米が短髪という設定もあり、攻殻機動隊の少佐に脳内変換されてきたほどだ。ドゥカティのバイクを乗り回して中国勢をかき乱すアメリカの軍人スコットもアキラの金田みたいな印象を受けるし。それと同時に、非常に色彩豊かで土着的な中国の儀式や食事シーンの描写にすごく力を入れており、凄く視覚的な情報の多い作品である。ぜひアニメ化して欲しい。