midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「マネーボール」を観る。

マネーボール (字幕版)

マネーボール (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 セイバーメトリクスを実践して2002年に20連勝を記録した弱小チームであるオークランド・アスレチックスGMビリー・ビーンについて描いた作品。全体的な演出やカメラの色味は渋めで大人っぽい作りだが、戦術が機能し始めて右肩上がりに成長し、ラストにかけてハリウッド映画的な高揚感を存分に味わえる良作。ブラッド・ピットジョナ・ヒルのタッグ作。

ずっと前から統計的な処理と野球は相性がいいよなーと個人的に思っていた。セイバーメトリクスでは野球を「27個のアウトを取られるまで終わらない競技」と定義していて、そこまで厳密に野球というゲームを捉えていたわけではないけど、サッカーやバスケと比較して競技中に時間が止まったり(バッターが打つまでは守備側はピッチャー以外は弛緩状態だし、攻撃側もバッター以外はリラックス状態になる)、攻撃と守備が明確に分かれていたりとルールがサッカーやバスケと比較して複雑な分「複雑性の低い」競技だなーとずっと思っていたのだ。一応小学生の頃は野球のプレイヤーとしての経験もあるし。セイバーメトリクスではバッターの良し悪しを出塁率で表現できるけど、サッカーやバスケではプレイ中に目まぐるしく攻撃と守備が入れ替わるしチームの戦術にもよるから、単純なパスの成功率やドリブルで相手を抜く成功率が選手の良し悪しに直結しない。高いに越したことはないが、最終的に点を取るまでの動きに貢献できるかどうかがこの数字だけだと判断できないからだ。

セイバーメトリクスが基本的にお金のないチームが取り得る戦術であるというのも興味深かった。出塁率が高いのに低評価の選手を獲得しやすかったからという理由だが、お金のあるチームも同じようにセイバーメトリクスを導入してからは選手を選手の評価軸も変わり、これまでと同様に勝ち続けられなくなったというのも面白い。選手を分析・スカウトする手法がスカウトマンによる勘と経験から脱して、野球という競技がレベルアップしたんだろうなと思わされる。

しかし、小さい球を木の棒で打つという競技がこれほどまでに人を楽しませ、人の人生を良くも悪くも変え、巨大な産業として成り立っているというのがふと冷静になると面白いよなーと思う。