midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

 「社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門」

 最近、個人的にNPOに対する関心が高まっている。社会課題が山積みの日本で生まれ育って、社会参加と言えば納税と投票と仕事くらいしかしていない中で、何か「活動」できないかなと模索・情報収集し始めているのだが、その過程で知ったのが著者。もともと企業経験があり、本書もNPOを事業として成り立たせ、かつ存続し、政治をはじめとして概説する人達との繋がり方を実践を基に解説しており、とてもためになるしこういう活動を応援していきたいし自分も関わりたいなと思った。特に、著者のNPO法人「フローレンス」が最近情報システム部門の採用を募集していたのでちょっと自分も時間限定で手伝えないかなと思ったけど、NPO団体の業界分析もままならない状況だったので見送ってしまった。勿論採用してもらえない可能性もあるけど、何か話を聞いてみて別の形(寄付なり)で応援することも出来たかもなぁと思う。ポッドキャスト「フェアリー」も最近たまに聴いており、「フローレンス」の事業にも興味あったのだ。

fairly.fm

本書では、やはり利益を追求して大きくすることを目指す企業との違いを軸に丁寧にNPO事業について例を挙げながら説明がなされる。

・(社会問題の)「構造」を理解することで、「ここを押せば問題が解決できるかもしれない」という「仮説」を得られる。

・反証、検証を繰り返して「どうすれば可能か」を考え詰める。分からない部分はヒアリングや書籍で検証し、可能性を問い詰める。

非営利団体だからこそ利益は大事である。株式会社と違い、利益は株主に配分せずに目的追求のためにもっと使う、という大学や病院の成立過程のような構造になる。会計上も利益と言わず、「剰余金」と言う。

・モノやサービスの受益者から対価をもらえないケースが多いので、マネタイズの方法を開拓する必要がある。大きく「対価モデル」「寄付モデル」「受益者労働モデル」「行政からの受託モデル」のマトリクスで整理できる。それぞれ課題解決においてメリデメがある。事業担当者が行う講演費や行政の助成金クラウドファンディングを利用する方法もある。特に、助成金獲得のための事業計画は、通常の企業よりも「なぜ自分でなければ出来ないのか」というエモい説明ができることがカギとなる。

・目安として1年後に営業利益率10%を目指す。

・モノやサービスの適切な価格を導くために「価格感度測定法」を使って必要な人にマッチする価格を設定する。高すぎると買ってもらえないし、安すぎると事業存続やサービス品質の保証が出来なくなる。

・サービスを着実に育てるために、利用者の口コミを大切にする。NPSという指標を使って満足度を測り、サービスの質を高めていく。従業員自身も同様に会社を評価してもらい、気持ちよく働ける仕組みを作っていく。

・事業を行っていると、隣接する社会問題に出会ってしまいがちで目移りしてしまうが、多角化しすぎると本業が立ちいかなくなって今うので、きちんと線引きをして考えることも大切。

・国に事業をパクってもらうことは名誉だと思っていい。社会保障の仕組みは大体は一般の人が考案したものを後から行政が制度化していった経緯がある。制度化されることで社会問題のスピードも劇的に変わる。そのためにも、自分たちの活動をきちんと広報し、政治家の施策に対応したりと政策化しやすくしておくべき。

・ボランティアだからという理由でサービスの質をおざなりにしてはならない。