midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「PRODUCERS' THINKING “衝撃作"を成功に導いた仕掛け人たちの発想法」を読む。

転職したいし、なんかエンタメ界の仕事論みたいなの読みたいなと思って手にした本。著者はスペースシャワーTVに在籍しながら映像に関するプロデューサーをしているひとで、彼自身の文化受容の個人史から始まり、信頼する仕事人に対するインタビューという構成になっている。本書に取り上げられてるのは主に映像コンテンツで且つ、それぞれプロデューサーという立場の人達だけど、色々な関わり方があって改めて面白いなぁと思った。簡単に言えば、映像を制作(インディーズがメイン)、販売、流通、消費(映画館)、批評するみたいな感じなんだけど、それぞれ共通する悩みもあれば、なかなか串刺しに出来ない事情があったり。自分の立場を楽にするとシワ寄せが同じ業界の別の立場にいったりして、結局なかなか構造改革が進まない。でも、このままじゃジリ貧で危機感はあるという。

結構示唆的だったのは、映像業界と現代アート業界での消費に関する考え方だった。映像業界では、ある意味旬な俳優をはじめとする旬な作品をいち早く世の中にアウトプットする思考で制作されてるのに対して、現代アートの世界では、一時の消費に流されず、作家にとっての数十年の活動を見据えながらポートフォリオを作成するようなプロデュースが主だという。後は、最近も是枝監督が吠えてたけど、助成金をもらいながら制作活動をすることに関する問題。「万引き家族」に対する批判のような、助成金をもらうならプロパガンダ映画を作るべきだみたいな意見は糞だと思うし、カンヌを受賞しながら無視した政府の対応もカスだと思うけど、一刀両断に助成金制度を否定するべきでない、という東京国際映画祭の審査員をしている人の意見もなかなかリアルで説得力があった。

あと、現在の年齢は上でも自分と同年代で色んな代表作と言えるプロデュース仕事をしている人たちの体験談とか聞いてると、なかなか転職欲を奮い立たせてくれるものもあった。皆生活はとりあえず出来てるけど、明日の保障もなくワーカホリックに仕事していて、プロデューサーとして人の意見を集約して調整事や資金・予算管理するってホント大変だよね、と改めて思った。