midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

ペパーミント・キャンディー」を観る。

早稲田松竹にて鑑賞。全然前情報なしで観て、全く期待してなかったんだけど、結構面白かった。一応、同時上映の「タクシー運転手 約束は海を越えて」とのくくりとしては「光州事件」なんだけど、本作ではほんのちょっと触れる程度。鑑賞後は、「1970年代末から1999年までの韓国を舞台に生きた一人の男の崩壊人生」として整理できるんだけど、観てる途中ではそう解釈できないのが本作のミソ。劇中に挿入される電車の場面に見立てて、人生の分岐路を徐々に過去に遡って語っていくという手法を取っているのだ。しかも、円環的な構造を取っているのも面白い。そして、目をそむけたくなるようなえげつない暴力描写の中に、リフレインするように描かれる美しいペパーミント・キャンディー

冒頭の場面は、異様。こぎれいなスーツを着ているのに、目が血走って正気を失っており、一目でまともじゃないと分かる男性が河原で横たわるところから始まる。そして、結末の場面も、若き日の無垢な同じ男性が河原で横たわる場面で終わるのだ。冒頭の場面の続きとしては、全く空気を読まず参加した同窓会で歌いまくり、踊りまくり、川に飛び込むというサイコパスぶり。結構戦慄である。映画の伏線って、「何気ない描写が後になって意味のある描写だった」ことを楽しむ術だと思うんだけど、本作では逆に、物語の前半に描かれた謎のアイテム(カメラとか)とか人間関係について、後になって分かるという構成になっている。それは同時に、観客にとって当初は嫌悪の対象でしかなかった主人公に対して、「あれ?そんな酷い目に合ってたの?そんな風に落ちぶれていったのね」と共感していく過程でもある。そして、鑑賞後に振り返ってみると、結構真面目に建設的に人生を構築しようとしていた男なんじゃないかと思えてしまうという。

なんというか、北野武映画っぽい湿っぽい面白さ。