midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け」を読む。

著者を知ったのは「BAZOOKA」に出演していたのがきっかけだったか。日英のバイリンガルで、活動の拠点は日本にあるけど、タイムレスな海外のニュースや時事ネタをきちんと背景まで掴んだ上で日本語で話せる人で、面白いおっさんだなぁと思った。大麻始めとするドラッグの経験者でもあり、解放論者であるのも自分と同意見だったり。そんな人が書いた久しぶりの単著で、日本のシステムが色んなレベルで立ちいかなくなってきており、変えていかなきゃダメだよと警鐘するもの。。面白かったけど、ちょっと情報の確度には怪しい感じもした。

扇動に乗るなというメッセージが繰り返し出てくるんだけど、本人のメッセージも割と又聞きだったり単なる印象論から「べき論」に飛躍させてるような部分もあり、自身もポピュリストっぽく見えてしまう感じが否めない。まぁ彼自身は研究者ではなくジャーナリストなので実証的な検証・分析をする専門家ではないかもしれないけど。特に、トランプはロシアから協力を得ている「らしい」とかいう記述とかは実証されていもいない状況証拠だけから語っており、ちょっと危ないなと。

「客観的事実よりも、ある個人や特定の集団にとっての都合のいい正義ばかりが巧みに発信・拡散され、それが本来あるべき検証プロセスを経ることなく広く支持されるに至ってしまう(略)その強力なエンジンとなっているのが、英語圏などで急速に一般化した政治的なインターネット・ミームです」と。決して真新しい意見ではないけど、アメリカのトランプ、フランスのルペン、イギリスのファラージ、日本の安倍、フィリピンのドゥテルテなど、世界各国で発言力を強める排外主義的な政治家はこういうミームが強力に作用していると個人的にも思ってる。そして、ロイ・コーンやジョージ・ソロス、スティーブ・バノン、マイロ・ヤノプルス、またはミリシアやオウス・キーパーズの団体など、あまり日本に知られていないトランプに影響を与えた人物や団体の紹介はためになる。特にスティーブ・バノンは著者のtwitterで初めてヤバさを知っていたので、改めて説明を読んで面白かった。

あと、「世界にはたくさんの”弱者集団”が存在していますが、チベットのように世界中から注目され、欧米社会が爆弾ナ支援を行うケースがある一方、シナイ半島ベドウィンのように無視され続ける人々もいる。こうしたエアポケットが、ISのような組織にとっては格好の居場所になるのです。」とかも知らなかった。

また、日本の戦後リベラルやSEALDsに対しても手厳しくて、うなずける部分が多かった。安保成立時に即戦争勃発を煽りたてたメディアや知識人に対して、国家間の戦争に至るまでのプロセスがどれだけ複雑で困難か全く分かっていないというとことか。

また、難民受け入れはいつやるかの問題で、やらないなんていう選択肢はないという話も現実的で良かった。北朝鮮金正恩政権が崩壊したら、大量の難民が日本に流れる可能性はかなり高いとか。

また、「アメリカのCNNやイギリスのBBCの討論番組は、「朝まで生テレビ」のような2陣営対決型ではなく、テレビ画面を3つに割っていることが多い。「0」と「1」以外の新たな提案、もしくは妥協案が生まれるようにするための知恵です」というのも知らんかった。単なる白黒だけでなく、きちんと無数にある選択肢を吟味して議論する遡上を作る必要は確かにあると思う。