midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

モハメド・アリ 聖者」を読む。

モハメド・アリ 聖者

モハメド・アリ 聖者

モハメド・アリが亡くなった。率直に言うと、彼自身に対してそこまで強い思慕はない。彼がボクサーで「蝶のように舞い、蜂のように刺す」フレーズだったり、ベトナム戦争の徴兵を拒否して公民権運動に加わっていたり、マルコムXのように自分の「カシアス・クレイ」という名前を捨ててアリと名乗ったとかいうエピソードは知っていたものの、当たり前だが、現役は自分が生まれる前に退いており「過去の人」という認識はあったし、ボクサーとしての彼の凄さに(映像などで)触れたこともない。逆に言えば、なぜ彼はこれほどまでにカウンターカルチャーの分野でヒーローとして崇められているんだろうと思っていた。

意外だが、もう10年以上前の中学生の頃に読んでいたファッション誌「Men's nonno」で彼が特集されていたのが初めて知るきっかけだったりするのだ。彼はその特集シリーズの中で、バスキアのようなストリートアート、アレン・ギンズバーグバロウズのようなビート文学の代表人物や、チェ・ゲバラのように、反体制のアイコンのような存在だった。彼がどこまで意図していたか、極東のファッション誌で中学生に読まれるなんて知らないだろうが、そんな「凄い人」という印象がアップデートされることなく現在まで生きてきた。

本書は彼の身近にいた親友ともいえる写真家ハワード・ビンガムによって撮られた写真集である。フレームに収まるのはマルコムXやジャクソン5やビートルズクリントン大統領など、「凄い人」ばかりである。余所行きっぽくない、何気ないシーンはあまりないので、そういう場面で彼が何を考えていたのかなーというのは気になるところ。写真集という場面を切り取るメディアとしては歴史的瞬間を眺めるという意味では見る甲斐があるけど、彼が何を考えていたのか知りたい自分のような人には向いてないかも。