midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

磯部涼「踊ってはいけない国で、踊り続けるために」を読む。

本書中でも指摘されてるけど、確かに「踊ること」自体を法律で規制しているわけじゃないから、このタイトルってミスリードなんだよね。特定の環境で踊ることを規制されているのは間違いなくて、現在の環境にそぐわないのは確かだし、それは是正していかなければならないとは思う。でも、現実に社会のルールを変えていこうとした際に、木曽崇氏が指摘しているように、「Let's dance 推進委員会」は政治的な手法がナイーブなんだと思う。本書では、変えていくための実践編ということで、実際の請願の仕方や、他分野で実際にルールを変えていく活動をしてきた人達の証言を集め、議論する。

その中で永井良和氏の以下の記述は、なるほどなぁと思った。

「風俗産業は移り変わりが激しいです。日々、新たな脱法の手口が考えられていますし、売買春は無店舗型、派遣型によって不可視化していますしギャンブルはネットに移しつつあります。(略)その中で、店舗を構え、そこで酒を出して踊らせる、というような昔ながらの営業形態を続けているのはクラブぐらい。(略)街の成り立ち、風俗店のあり方が大きく変わってしまった時代にあって、目立って損をしている。」

確かに、今自分たちが好きな音がなる「現場」として意識されてるのはクラブくらいのもので、他に変わりになるものがない。dommuneとかのネット上の仮想クラブを楽しむことは出来ても、その場の臨場感や人との繋がりは完全には再現できない。結局割を食ってるのは否めない。

また、荻上チキ氏の風営法に関する記述。

風営法はしばしば、青少年健全育成条例などと同様、「被害者な気取締」だと問題視されますね。(略)法による利益を教授する主体が明確ではありません。」これも的を得てるよなあ。一応今は法で認められてるから、取り締まることで警察の点数稼ぎにはなるけど、クラブで踊ることが対象外になったとしても、誰も損する人がいないと思う。もちろん、近隣環境に迷惑をかけるようなクラブは誰かに不快な思いをさせるけど、それは法とは関係ない領域の問題だし。むしろ。「風俗営業をめぐる様々な問題は、根本の問題を解決しないために設定された擬似問題に思えてならないのです。」というように、警察含め、目をそらすために目に見える何かを場当たり的に対処しているだけに見える。

それに対抗するためには、「白書」作りが重要だという。「丁寧な白書を作ることで、今までわからなかったことがわかるようになります。あるいは業界にとってはアタリマエのことでも、「知っている人の談話」で伝えられるのと、「何人中何人がこうなんです」とデータで記されるのとでは、説得力も違う。団体を作り、「○○協会調べ」などと銘打って公表すれば、メディアも専門家も、白書を引用しながら報じやすくなります。」確かに、こうやって数値化していけば、実際にクラブが「ほかの空間と比較して危険か」どうかはすぐにわかるはず。自分の遊び場を守るためにも、自分の個人的な活動が全て政治的な活動とつながっていると意識していかなければならないんだと思う。