「ハッカーと画家」を読む。
ずっと読もうと思いつつ読んでなかった一冊。2004年発行ということでインターネットの世界も結構移り変わっているが、今のタイミングで読んで色々と示唆的だった。ハッカーと画家の仕事ぶりの共通点を挙げてハッカーについて語るエッセイ。漠然とイメージしていたイノベーターでリバタリアンっぽい人まんまという感じだった。
デスクトップアプリじゃなくてwebアプリがいいよねというのは完全に現在もそうだし、静的型付言語の人気が高まり、本書でJavaの代わりに推しているRubyやPerlと言った言語を使っていたシステムはGoやRustに代わっている印象もある。「私たちに必要なのは(略)作法にうるさいコンパイラおばさんとお上品な会話をするような言語じゃない」みたいな皮肉っぽいフレーズは面白い。速いコードを得たいなら、静的型付にするよりも良いプロファイラを作る方が良いと述べていて、なるほどなぁと。この辺りのトレンドは揺り戻しもあるだろうし、20年後にはプログラムを書く環境がまた全然違ってるだろうから未来には元に戻っているかもしれない。
また、事前に聞いていた通り、Lisp推しとMicrosftや頭の固いサラリーマンに対する悪口エピソードも笑える。
そのほか、物理学と文学の博士課程について、大学の研究分野は知的に等価ではないよねと述べていることも驚きだった。多少言い過ぎな気もするが、分からなくもない。「文学を研究している人々が、実際に文学を創り出している人々にちょっとでも役に立つことを言うことはほとんどない」と言うフレーズも辛辣だが笑える。理論家、研究者であるより実践を重んじる。デザインについての章では、科学と芸術に関して「科学的な思考は使う人にやさしいことを指向してはいない。芸術の分野では事情は全く異なる。(略)すべての芸術は人間の興味と限界に迎合しなくちゃならない」と言っていてこともなるほどなぁと思った。