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 「午後8時の訪問者」を観る。

午後8時の訪問者 [DVD]

 現時点でのダルデンヌ兄弟の最新作。いつも通りドキュメンタリー的な乾いた演出と生々しさで楽しめた。医者である主人公が一時的に任されていた診療所に不意にやってきた時間外の訪問者が不慮の死を遂げていたことを知り、事件の革新に迫ろうと奮闘するというお話。

いかにも日常にふと起きそうなリアルな小さな事件だし、フランス社会の暗い部分が垣間見えるんだけどズブズブに陥ることなく、映画内の事件がひと段落して即座に日常に戻っていく構成が見事。主人公の女性をはじめとして登場人物たちも不自然な喜怒哀楽溢れる表情をしたり、過剰なサービス精神で他者と接することもないし、カメラが生活に寄り添っている感じが相変わらずとても良い。主人公が寒そうな朝方や眠れない夜に部屋の窓を開けてタバコを吸うバックショットとか、仕事明けに患者さんに貰った手作りのパンを齧りながら少しボーっとする瞬間とかも実に映画的な時間で好き。実にフェティッシュなのだ。

感傷的な演出もドラマチックな音楽も何もない、淡々としたラストシーンも見事。