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webエンジニアのメモ

 「別離」を観る。

別離 (字幕版)

別離 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 公開当時に結構話題になっていた印象があった一本。傑作だった。マジで今年観た中でもベスト級。現代のイランに住むある2つの家族の間に起きた事件を軸に、夫婦、介護、失業や働き方、宗教、子育て、などなどありとあらゆる社会問題の難しさを全く違和感なく描きながら、基本や登場人物たちの本意や嘘が少しずつ観客に提示されていく先の読めないサスペンスであり快作。フランスのダルデンヌ兄弟が社会のワンイシューを切り取ってドキュメンタリー的な演出で作る作品に対し、本作は同じような姿勢で人間が直面するあらゆる問題に向き合ったような感じ。

何より、登場人物たちが皆真面目で誰かを守りたいと思いつつ、少しずつ欠点があるのが良い。めちゃくちゃ人間臭いのだ。自分本位のように見える行動や嘘にのっぴきならない事情があったり、それを庇うためにまた別の人が嘘をつく形になってしまったり、偶然のすれ違いで問題がこじれていく様がめちゃくちゃリアル。誰もがハッピーになるような落とし所がなく、観ていて、これどうやって物語として終わらせるんだろうと思っていたが、煮え切らないラストも納得だった。何かを選択するということは他の選択肢を捨てること、みたいな格言を思い起こさせるディープなラスト。

おじいちゃんの介護をする時に女性が服を脱がしても問題ないか、と宗教指導者に相談したりする場面などはイラン的で面白いな、と思うが、物語全般として東洋/西洋や貧乏/金持ちとか全く関係なく、普遍的に起こりうる家族の物語として非常に射程距離が広いのもポイント。

最近は語学学習を意識して英語圏の映画ばかり観てたんだけど、こうやって面白い映画は積極的に観なきゃダメだなと改めて思った。同じ監督で「セールスマン」という映画もamazonプライムで観れるので次に観てみようと思う。