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webエンジニアのメモ

 「わたしは、ダニエルブレイク」を観る。

わたしは、ダニエル・ブレイク [DVD]

わたしは、ダニエル・ブレイク [DVD]

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2017/09/06
  • メディア: DVD
 

 いつもケン・ローチ監督っぷりがさく裂した物語。イギリスのニューカッスルを舞台に、苦しい生活を送る市民の助け合いを描く。主人公は元大工の58歳ダニエルブレイクと、失業手当を貰うためにいった役所で出会ったシングルマザーのケイティ。子供たちを含めて飾らない自然な演技と世界観が、やはり「万引き家族」を思い出させる。あ、ダニエルは悪いことはしてない立派な市民だけど。

ダニエルの最後の言葉に物語は全て集約されているといっても過言でなく、一市民として誇りを持って生きることはとても大事なんだが、だとしたらもう少し生活を立て直すことが出来たんじゃないか、とも思ってしまう。ケイティもそうだが、コントロールできない不運が元で生活が傾いてしまうことはあると思うが、他に頼れるものがないのか、とも思ってしまう。親族や友達や職場のつながりのような人的資本もそうだし、専門性のある仕事をある程度こなしておけば、多少の不運があっても人生を持ち直すことが出来るんじゃないかと思うのだ。ケイティは若くして母になったが大学に行って学ぼうとする意欲のある人だし、ダニエルはテクノロジーに疎いが大工としてのスキルは決して低くない。なのに、病気や離婚などで一気に失業、ホームレスまで生活が傾きかけてしまうのは少し計画性がない人生のように感じてしまう。公的扶助を受けることを恥に思うことは全くないし、それを当てに生きるのでもなく、きちんと必要な時に受給して再出発して生きていける社会をどう構築していくべきか、というのをイギリス、日本の違い関係なくもっと考える必要があると思った。

単純に日本で生活する自分の価値観と比較してもしょうがないのだが、自分はもっと人生に色んなセーフティネットを張って生きていきたいなと思う。明日交通事故になるかもしれないし、美人局に騙されて高い物を買わされたり余命1年の病気が発覚するかもしれない。でも、そうなっても悔いなく前向きに生きていけるような精神的なゆとりは持っておきたい。本作の主人公二人は決して苦しくても投げ出さないし、歯を食いしばって守りたいものを守る。その姿に共感しつつ、しなやかに生きていくための努力を続けていきたいと思った。