midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

ファントム・スレッド」を観る。

 ポール・トーマス・アンダーソン監督とダニエル・デイ=ルイスの最新作。めっちゃ良かったけど、なんか情報量少ない映画だった。映像としてはかつてのルキノ・ヴィスコンティ的な豪華な貴族趣味が利いたこってりした画面が続くんだけど、内容は割と古典的な男女のもつれあいという。めちゃくちゃ厳格な生活習慣や母・姉の呪縛に縛られて生きている仕事一筋の仕立て屋男と、街でウエイトレスをしていた若い女が出会い惹かれて共に堕ちていく、みたいなお話。

レビューにもあったけど、「安易」という評は分からなくもない。「マチネの終わりに」に通じるような、人間関係ってそんなしょうもない、間抜けな事で変化しちゃうんだ!という驚きというか怖さがある。ヒロインも出生や背景についてほとんど描写がないので、男との関係の中でしか彼女の人となりが窺い知れないというすごく近視眼的な映画だと思う。そういえば本作の見どころでもある仕立ての描写は非常にフェティッシュで、生地を割いたり、針を打ったり、採寸したりみたいな所作がどれも異様になまめかしく、どれもアップで近視眼的だ。本作では近年稀な、恋愛映画なのにセックス描写が全くないんだけど、男女の着付けや採寸がセックス描写を代理しているようでもある。めちゃ面白いんだけど、めちゃ名作だとは思えない変な映画だった。