midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「ヤクザと憲法」を見る。

「21世紀を生きのびるためのドキュメンタリー映画カタログ」を読んで気になっていた一本。うーむ重い。現役のヤクザの事務所にモザイクもいれず直接密着取材して取れた彼らの日常の風景。あぶく銭持ってスーツ決めて派手な外車乗り回していい女横に抱いて肩で風切って街を歩くヤクザなんて一人も出てこない。大学生が住んでそうなアパートで洗濯物に囲まれながらドラッグを売って必死に生きていたり、宮崎学の「突破者」を愛読する冴えない部屋住みの下っ端とその父親代わりの選挙権を持たない幹部だったり、西成の安そうな大衆居酒屋で飲む組長だったりする彼らの日常である。暴対法により、憲法で保障されているはずの市民としての権利を徹底的にはく奪され、ヤクザ以外で自活もできず行き場もなく生きている。堅気の仕事につけず、口座も持てず、保険にも入れず、住むところも追われ、子供を保育園にも入れてやれない。無法者なんだから当然のことだ、と彼らを見て言える人間は生活保護を甘えだとぬかすような論理で、単に想像力が足りていないだけだと思う。人生の選択肢が限られ、ヤクザになるしかなかった人間たち。「他に助けてくれる人なんかいない。ホントに辛い時助けてくれたのが組長(おやじ)でした。」というある組員の一言が重い。皆で高倉健のヤクザ映画映画観ながら俺もこんな感じで主役になれたらなぁなんて寂しそうに笑うヤクザたち。それと引きかえ、取材班のカメラを強引に奪いヤクザ達を恫喝する国家権力・警察の醜いこと醜いこと。山口組の顧問弁護士を務めた山之内弁護士という人物の紹介にもかなりの尺を割いているのだが、通常ありえない罪状でしょっ引き、見せしめのように実刑判決を食らわせる国家権力。そのくせ汚い仕事は彼ら無法者の助けがなければ回らないのだ。声なきものの声を提示したとても重要な作品だと思う。