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webエンジニアのメモ

「100分でわかる企業法務」を読む。

 転職してから会社のバックオフィスの人達と仕事する機会が増え、彼らがどんな業務をやっているのか把握してみたいなと思って読んでみた。会社の図書館で借りたんだけど、経理が買っていたらしい。けど、本書はどちらかというと役員向け。著者も企業法務を専門にやっている弁護士事務所で、彼らが役員としてどのように仕事に当たるべきかを様々な判例を基にアドバイスする、という内容。正直、初心者じゃ100分じゃ読めない。取締役になりたいかというと今の自分にはあまりそういう意識はないのだが、とりあえず色んなことを気にしなきゃいけなくて結構割りに合わなそう、と思ってしまった。基本、リスクが大きいから気をつけろ、というスタンスの内容である。

「取締役は莫大な損害賠償を負うリスクがある」→取締役に対する訴訟は増加傾向にある。カルテルや談合なども会社のためを思ってしたことであっても関与が分かれば独占禁止法の違反で莫大な課徴金を課されるケースもある。製薬会社などの場合、薬事法で虚偽の宣伝や広告をして刑事罰を受けるケースもある。
株主代表訴訟や法令定款違反などのリスクもある」→上場企業の場合、有価証券報告書に誤りがあれば虚偽記載の責任を問われる。株主代表訴訟は制度の変化によって、勝訴した場合に会社に調査費用を請求できることになり提起しやすくなった。最近では役員の多くは役員賠償責任保険(D&O法)に加入して自衛している。実際に訴訟があれば、たとえ会社を辞めようが賠償責任からは逃げられない。
「取締役は善管注意義務を負うべき相手は、社長ではなく会社あるいは株主である。」→よって自らを推薦してくれた社長に対しても、その行動如何で取締役会で苦言を呈することが必要である。法律上では、取締役を選ぶのは株主である。また、社長を監視することこそが取締役会である。こういった機能をどれだけ高めることが出来るか、株主の資金を効率的に運用できるかを目指すことがコーポレートガバナンスである。
善管注意義務」は一般的に、法令・定款の順守義務、監視義務、内部統制システム構築義務の3つが挙げられる。法令については地方自治体の法令から外国の法律も含めて法令に当たり、全てを把握するのは不可能なので、怪しいことは顧問弁護士に逐一確認した方が無難である。知らなかったでは済まない。内部統制システム構築は会社によって求められる水準は異なるが、時勢に合わせて常に作り変えていくことが求められる。不祥事があった際もシステムがどう機能していたか裁判で調査されるし、監査でもチェックされる。
リスク管理のために」取締役会においては、もし議案に反対の場合はきちんと反対した旨の議事録を残す必要がある。反対だと思ってて口出ししないと賛成したものとみなされる。
有価証券報告書の虚偽記載」ライブドア事件。ストップ安が繰り返され、株主から損害賠償を起こされ、判決でも76億円が損害として認められた。→事件当時は、なんとなく「自分で株買ってた癖に暴落したら訴えるとか株主は卑怯だな」みたいな印象があったけど、違うんだなと改めて知った。取締役としては、もし粉飾決算という法令違反を認識した場合、会社の被害を最小限にすべく、適切な対応策を検討・実行する義務があると。こういう不祥事とかインサイダー取引を防ぐための内部統制システムの構築義務の順守状況が問われる。
M&Aリスク」あらゆるリスクがてんこもりなので、デューディリジェンスをしっかり実施することと、恣意的な株価算定になっていないか細心のチェックをすることが必要。株価算定のためには「インカム・アプローチ」「マーケット・アプローチ」「ネットアセット・アプローチ」などの評価手法があり、それぞれメリデメがあるので算定結果が大きく異なることも理解する必要がある。
MBOリスク」株主と経営層が対立することになるので、善管注意義務違反とならないためにも①MBO価格を公正な価格とすること②利益相反関係を解消するための措置を取ること、が必要になることを忘れてはいけない。
「株主対応のリスク」もの言う株主が増えつつあるので、株主総会などで想定質問などを作って練習しておき、きちんと自分の責任範囲の説明を出来るようにしておく必要がある。