midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「投資の鉄人」を読む。

とても堅実で良い本だった。色々な経歴を持つ投資運用のプロ4人が、投資運用をしている人が中で訪れる様々な出来事に対して、惑わされるな!と警鐘する一冊。「この銘柄さえ買えば絶対儲かる」とかチャート分析みたいな本とは一線を画す、長期で資産運用をする人向けに「情報」「相場」「商品」「自分」という切り口から心得を説く。ちょうどNISA口座やネット証券口座の開設も済んだし、これからの自分の戒めにしたい。

「相場に惑わされない」というのはチャートの上下に一喜一憂するんじゃなく、実体の企業価値をきちんと見極めて売買をすべきという全うな話でためになった。

あと、「自分に惑わされない」の章では行動経済学の知見から投資行動を分析していて、「プロスペクト理論」という概念は知ってたけど単語として知らなかったものを知って腑に落ちた。「人は儲かる喜びよりも損失を回避しようとする気も知の方が強い」というやつね。だからこそナンピン買いはその場で損を確定させず先送りするだけになりがちだという。あと、「認知的不協和」の話も出てきて仕事にも通じるなぁーなんて思ったり。これは「酸っぱい葡萄」理論で、自分で出来ないことに対して解釈を変えてやり過ごすという状態で、損切りをうまく出来ない人がやってしまうという。

他にも、肝に銘じておきたい言葉がいくつも出てくる。「分散と長期は合わせて1本です。分散投資がちゃんとできているかどうかの目安は、定期的にモニタリングしたときに、自分が持っている資産の中で下がっているものがあるということ。全部上がっているときは注意が必要です。下がっているものがあったら、自分のポートフォリオはちゃんと分散されているなと安心していいのです。」とかね。全部上がると喜んじゃいそうだけど、実は危険だという。

「中立的なFPです」というFPは信用ならないという話もためになった。弁護士が正義を追求するのではなく依頼者の利益を最大化することを目的とするように、FPも依頼者の利益を最大化することに力を割くべきだと。

短期投資はマイナスサム・ゲームで、手数料を取る証券会社だけが儲かる仕組みだというのも言われてみると確かに、と感じた。株を買う場合は、ファンダメンタルズ分析をした上でその企業のオーナーとなって事業自体に投資をするという意識で臨もうと思う。

より実践的なものだと、アセットアロケーションの話で「100-年齢=株の比率」という話もためになった。確かに今の俺にとっては人的資本の方がはるかに稼げるので、多少アクティブに70%位株(の割合が多い投信)を保有するんでもいいのかも。ただ、アクティブファンドやテーマ別信託は結局信託報酬が高く仕組みが複雑な割りに資産規模も小さく失敗する例も多いというから、よっぽど応援したい内容でなければポートフォリオに組み入れるのは辞めとこうと思った。

後、日本の銀行の環境として、「ウォーレン・バフェット」が日本の証券会社の店頭に行ったら、口座を開けてくれないですよ(笑)」という冗談もあるくらい、コンプライアンス的な事務処理の徹底が非常に厳しくなっているというのも知った。事務に体力を割かないといけないため、現場の人間の知識が不足して提案力が落ちてるという。