「ファクトフルネス」を読む。
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
- 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2019/01/11
- メディア: 単行本
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ちょっと前にすごく話題になっていた本。会社の図書館制度で借りて読むことが出来た。タイトル通り、事実をベースにモノを考えることの大切さを、思いこみで誤りがちな10章のケースに分けて解説するもの。著者は「世界のことに関するクイズ」として13問の選択式クイズを冒頭に出題するのだが、ランダムに選択する場合の確率(本書では「サルが選んだ場合」という言い回しをする)と比較しても、いかに人間が誤った回答をしがちかというのをまず説明する。それも、所得や学歴や政治的立場に寄らず。このクイズを数十年繰り返してきて得た知見を基に、データに基づく世界の見方を提供しようという作りになっている。とりあえず、以下の点は頭の中に前提として、フレームワークとして入れておきたい。
・世界の人口70億人を所得レベル(1日の稼ぎが2ドル、8ドル、32ドルという区分)で4グループに分けると、国や宗教などの違いよりもこの4グループ間の方が生活レベルの変化を説明しやすい。
・極端な値同士を比較しない。また、「過半数」のような言い方に振り回されない。
・「世界はどんどん悪くなりつつある」というネガティブでドラマティックな例や思い込みを排して考える。→この辺りの考え方は「ホモ・デウス」でも前提になっていた。ざっくり言って、飢餓や乳幼児死亡率は下がり、教育レベルも識字率も上がり、世界はどんどん人間にとって快適で住みやすくなりつつある。
・途上国の出産率が多いのは乳幼児死亡率が残念ながら高かったからだが、世界的に出生率は減少しつつある。子供が死ななくなったから。これは避妊を認めないカトリックなどの信者などでも例外なくそうなりつつある。
・恐怖とリスクは明確に分けて考える必要がある。世の中に恐ろしいことはたくさんあるが(テロや飛行機の墜落など)、しかるべきコストをかけて対応するべきリスクではないことも多い。アメリカでは酔っぱらいに殺される確率はテロリストに殺される確率より50倍高い。また、物事を批判的に考えるあまり、予防接種や科学的治療を全て拒否するような考えにも気をつける。
・地球温暖化に関するフォーラムで、アメリカやドイツよりもインドや中国が二酸化炭素排出量が多いので対応せよ、という話が出た。国別で比較してもしょうがない。「ひとりあたり」で比較しないと意味のある議論が出来ない。
・「キューバ人は貧乏人の中でいちばん健康なんじゃなくて、健康な人たちの中でいちばん貧乏なだけです」言い方によって全く異なる印象。
・犯人探しを辞めること。梅毒は皮膚が爛れ見た目が悪くなってしまい痛みを伴う病気だが、国によって呼び方が異なっていた。ロシアではポーランド病と呼ばれ、ポーランドではドイツ病と呼ばれ、ドイツではフランス病、フランスではイタリア病、イタリアではフランス病と呼ばれた。他者・ガイジンに押し付けないと気が済まない傾向を認めること。