midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」を読む。

色々と界隈で話題になっていた一冊。この人も同級生。カラテカの入江が「天才社長」と語っていたなぁ。著者はメタップス(ビッグデータの解析や活用を軸にしたマーケティングやネットの決済事業を行う会社)の社長で、タイムバンク等も仕掛ける気鋭の起業家で経営者。

仮想通貨、フィンテック、シェアリングエコノミー、評価経済みたいなホットなキーワードを基に、資本主義社会の成り立ちや今後、貨幣の歴史や価値の視点から未来社会を予見する内容となっていて楽しめた。今の財務諸表では表現しきれない価値が現在生まれつつあることを目の当たりにするというか、ブルーオーシャンが色んなシーンに広がっていると思うと読んでてドキドキワクワクしてきて、重厚長大なIT企業で働いている自分のキャリアがなんて古臭いんだろう、もっと社会の先端に身を置きたいなーと思ってしまうほど。

本作でも書かれているように、たくさんの読書や体験から得た彼自身の疑問や仮説を、実社会で経営という手法を持って実験・検証する社会実験者のようだ。「経済の手触りが分かってきた」という表現も実感があって凄い。内容的には社会学というか未来学のような領域の話がメインなんだけど、本職の研究者でもないので正直実証的なデータや根拠が薄く、書き方も論文調でなく多少ポエティックな感すらあるんだけど、それが柔らかく読める特長にもなっていると思う。そして、ここ数年自分が考えていた社会のグランドデザインともリンクする部分がかなりあって、読んでて「だよねー」と頷きたくなるような箇所がたくさんあった。具体的に言うと、リバタリアン的な思考や、鈴木健なめらかな社会とその敵」や藤井大洋や小川 哲「ユートロニカのこちら側」みたいな近未来SF小説で得た知見が感じられて、勝手に同士感を感じてた。特に、本書の「分散化」という概念なんかは正しく「なめらかな社会」と同じコンセプトで、将来は中央集権的な意志決定をやめて分散化していくよねーという議論はとても納得感ある。あと、ビットコインがフォークした理由も「特定の存在が経済システム全体をコントロールしようとすると、それに反対する人が離反して経済圏の価値が下がってしまうか、分裂してしまうことになるので、独占や支配が難しい仕組みになっている」というのでようやく腑に落ちた。

一方で初めて知った概念も多く、「ゲーミフィケーション」とかは面白いと思った。「金銭的な対価を一切求めずに、経済システムを作ろうとするとゲームに近づいていく」という。ライプニッツの「普遍学」とダヴィンチの諸作品の対比とかも面白かった。中国でWeChatで認証・決済を行う完全無人コンビニができたり、電子大国として頭角を現しつつあるエストニアの話とかもSF的で面白かった。

一方で、自然や社会や生物や脳を相似形と捉える考え方とかはちょっと危ういかなと思った。この辺は否定的な学説があった気がする。後、意外と「デジタルネイティブ」や「トークンネイティブ」などの世代論を信頼しているのも違和感があった。

個人的には、もっとセルフブランディングを意識的にやらないとダメだなーと痛感した。せっかく色んなインプットをしてるんだから、きちんと社会に還元して知識を共有しなきゃなと改めて感じた。そうすることによって自分の市場以外での価値も高まるし、ここをサボってる場合じゃないなと焦りを感じたほど。もっと情報発信をしていこう。