midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「騙し絵の牙」を読む。

大泉洋のアテガキ作品ということで話題になっていた一冊。大手出版社の40代半ばの雑誌編集長を主人公として、電子出版や図書館やメディアミックスみたいな問題を抱える斜陽産業である出版業界を舞台に、魑魅魍魎とバトルしながら何とか自分の雑誌の廃刊を阻止し、文芸の面白さを伝えようと頑張るというお話。「東京フールズゴールド」の出版業界版という感じで、テンポよく進む物語で楽しめた。さすがアテガキというだけあって、脳内での洋ちゃん再現度がめちゃくちゃ高く、邦画を観ているような変な感覚で読めた。モノマネで修羅場を乗り切ったり、軽いトークで場を和ます感じは実際笑えるし超本人っぽい。癖のある登場人物たちも脳内で勝手に配役が決まって話し始める始末だった。個人的には、相沢局長は香川照之、奥さんは宮沢りえ、高野は蒼井優辺りを連想して読んでた。

出版業界の暴露本としても面白く、営業と編集の関係、作家と編集の関係だったり、広告や予算のつけ方、「配本リストの作成」「実倍率6割」みたいな業界用語も出てきて、他人の職場を覗き見してる感覚を味わえた。

ただ、タイトルの意味が結末で分かる内容になってるんだけど、そこまで胸をすかれるというか「騙された」感がなかったのはちょっと残念。エピローグに差し掛かるまで、随分悲惨な物語だったなぁと思ったら急に大逆転を決めるんだけど、前フリとかもほとんどないので、正直とってつけたような感じがしなくもない。「英語の勉強してた」ってのはあったけど。