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webエンジニアのメモ

 「カイジから経済を学べ」を読む。

カイジから経済を学べ

カイジから経済を学べ

 

 タイトルまんまで、カイジの作中で扱ったギャンブルにおいてキャラ達がとった行動が公道経済学の見地からするとこいうパターンに当てはまります、そしてビジネスシーンだとこういう例がありました、みたいな形で紹介される。全部で30章で、全て人間はこういう環境だとこういう行動をしがちなんで、意識して回避しようねという教訓本にもなっている。アリエリー、モッテルリーニなどの引用やざっくりした先行研究の数値は出てくるが、ほとんど難しい数式は出ずめちゃくちゃ読みやすい。

改めて読んで、カイジという作品の面白さに気づいた部分が多かった。読んだのは大学生の頃で、それ以降も何度か部分的に読み直してはいると思うが、やはり「限定じゃんけん」とか「地雷17歩」の既存のゲームのルールをアレンジして戦略性とかスリルを高めて物語を構成する力がめちゃくちゃ高い。日本最高峰だと思う。実際、「限定じゃんけん」なんかはゲーム理論とかの論文でも扱われてたりするらしい。

ビジネスシーンの例で学びになったのがサントリーとキリンの提携。サントリーは「最大の非上場企業」と呼ばれた同族企業で、キリンは三菱グループの中核で、水と油のような会社がアジア市場制覇のために提携したがやっぱうまくいかなかったと。「市場規範」だけでなく「社会規範」を基に行動するのも大事だよね、という話。

あと、ローランドのMBO話。経営陣が投資ファンドと組んでMBOを仕掛けたが、創業者が株主として抵抗するという話が2014年にあったらしい。創業者からファンド側の買付価格が安すぎるという指摘があり、保有者と第三者では価値の受け取り方が違う、という話。

あと、手術の成功率と数年後の生存率を、失敗率と数年後の死亡率にすると途端にイメージが変わり、実際に人間の選択率が変わるというのも面白かった。同じ意味なのに見せ方でほんとに人間は錯覚してしまうという。