midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「多文化であることとは」を読む。

なぜだか岸政彦を読んだ今のタイミングになって、社会学部卒業してから社会学的な著書あんま読んでねぇなーと思って、母校の教授の本を読んでみた。ちょっと予想できたことだけど、著者が自身で言及している通り、経済学的で実証的なデータを元にマイノリティの文化や社会を論じるのではないため、ちょっと説得力に欠けてしまう感じがする。軽いエッセイではないし、苦しんでいるマイノリティにスポットを当てたルポでもなく、研究書として参考文献はしっかり索引もあって体裁はしっかりしてるんだけど、読んでも新たな知識や閃きがなかったというか…。ヨーロッパでのマイノリティ受け入れの歴史と現在の状況と日本の状況を比較してみたり、著者自身が発信した論文や政策が社会に対してどう影響したかなんてことも触れていて、長く研究者として扱い続けてきたテーマだからこその重みもあって読み応えはある。けど、扱うテーマがジェンダーや子供や宗教や国籍など多岐にわたるから散漫な印象になっているのかも知れない。例えば俺は移民は受け入れる方がいいと思うし、多重国籍は認めるべきだと思うし、LGBTにとって社会が住みやすいようにすべき、みたいな考えなので、マイノリティをどうにかして包摂「すべき」という基本的な立場は著者とほとんど変わらないと思うんだが、具体的にどうしていくべきかの視座も、政治家でなく学者という立場からかあまり言及がなかった。結果的には、こういう分野で社会学やるのって大変だなーという感想…。