midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

あさひなぐ」をまとめて読む。

多分、今年読んだマンガでベスト。ちょうど映画が公開されるというタイミングで無料アプリで3巻まで読んだら止まらなくなってしまい、速攻で全巻読んだ。2、3周した。なんでだろう、奇しくも去年のベスト「baby step」と同じく、「女性作家の書くスポーツマンガ」にドハマりしてしまった。作品としては全然違う面白さなんだけどね。高校生になって自分を変えたい一心から薙刀を始めた少女とその周囲の人々を描く作品。

本作は色んな要素で面白いんだけど、一番はやはりスポ根的な環境の中で主人公たちが徐々に強くなっていく姿を追えることだろう。主人公・旭の通う高校の薙刀部の個性溢れる面々とか「スラムダンク」にも劣らないキャラの魅力があるし、ライバル高校のキャラも同じく陵南や海南や山王のような立ち位置の高校があって魅力的なキャラがたくさんいるのだ。そして、桜木花道のようにズブの初心者だった旭が、誰にも負けない努力を積み重ねて、少しずつ強くなっていく姿が最大の見どころ。そして、「隠れていた才能を開花させ」みたいにあまり大げさに強くならず、あり得そうな成長を見せるのがリアルで良い。登場キャラは主人公の旭をはじめとして皆を好きになってしまうのだが、個人的に特に好きなキャラは翔子。あと大倉も好き。野口部長の不器用なのに頑張ってしまって上手く行かない姿とかは共感してしまって胸が痛い。こういう脇役にもきちんとドラマがあり、それぞれの思いにスポットライトを当てるのとかもスラムダンク的。

そして第2の面白さは、薙刀がスポーツでなく武道であるということを描いていること。主人公たちは汗をかいて切磋琢磨して青春して終わり、でなくきちんと「目の前の相手の弱点を付き、殺すこと」を主眼に置いた点にまで踏み込んでいるところが素晴らしい。この点で、同じ井上雄彦作品の「バガボンド」の空気感まで持っているのだ。特に試合のシーンは素晴らしく、旭が自分よりも強大な相手の懐に踏み込むべく、無音の中で薙刀の切っ先が交差しあい、汗が床に滴り落ちると同時に相手の踏み込むみたいな緊張感溢れるシーンとか痺れるほどカッコよいのだ。自分の恐怖心や緊張感をコントロールし、「いつまでもここ(試合場)にいたい」と感じるようなハイな心理描写のシーンとかも巧み。そして何より、22巻で登場する「部活がやりたいわけではない、武士になりたい」という少女の登場とかもそういうバガボンドの武蔵が追い求めた「強さとか何か」みたいな問いを反芻する。

そして、乃木坂48メンバーで映画化出来るような女子高学園モノとしてのコメディ要素もすごく好き。部室でのくだらないおしゃべりとか、合宿に行くときにお楽しみグッズをたくさん持って行ったりお洒落してみたりとか、数少ない男子生徒とのドキドキもあったり、「青春っていいねぇ…」みたいな遠い目で楽しめるのだ。そういう描写も丁寧で上手くて、全くスキのない作品である。出会えて良かったし、今後の展開も目が離せなくて生きる楽しみが一つ増えた感じだ。本作を読んでから、you tube薙刀動画を楽しんでみたり、街中で薙刀の包みを持つ女子高生たちの集団に反応するような変なおっさんになってしまったよ…