midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「脳が壊れた」を読む。

すごく話題になってベストセラーにもなった本作。面白かった。養老孟司の帯通り、「深刻なんだけど笑える」というのが率直な感想。「最貧困女子」とか、どっかで彼の著作を読んでてもおかしくない位彼の仕事領域に関心はあるが、実際に読むのは初めて。直情的でしっかり者で体育会気質だと自己分析する彼の評通り、脳梗塞により高次性機能障害を負った筆者が「自己の感覚を言語化する」ために様々な例え話を持ち出して(ガンダムネタが多し)右往左往する様や、過酷なリハビリを遂げて(失った脳細胞を補う新たな脳内ネットワークを構築して)少しずつ日常生活を取り戻していく様を克明に記した熱い文体が楽しめる(実際に彼は感情失禁と言われる状態が残っている)。あと、ずっと寄り添ってくれた最愛の妻への溢れんばかりのラブレターにもなっており(巻末に妻からのアンサーもあり)、凄く羨ましいし泣ける話となっている。やはり、多少なりとも感覚に障害が残ったまま自分の人生を素材に作り上げた創作という点で、卯月妙子作品に近いものを感じる。今は気ままに生きている俺だけど、この感覚をずっと持ち続けることは出来ない。同じく脳梗塞に倒れた、尊敬するダースレイダーのように、自分の感覚出来る世界を当たり前と思わずに、「あと5年」みたいな覚悟を持って人生を構築していくのも重要なのかも知れないなぁと思う。