midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「東京フールズゴールド」を読む。

音楽業界をネタにした長編小説ということで読んでみた。著者については知らなかったが、ロッキンオンとかでライターをしていたりフィッシュマンズの本を書いてきた人らしい。そんな人の初の長編小説が本作で、500ページ超もあって結構ボリュームある。けど、文体は柔らかいのでそんなに重くなく楽しめる。構成もintroとoutroとかinterludeとかアルバム的になっているのもお洒落。内容は、マッドチェスター的なバンドを日本でプレイしてちょっと業界で有名になったバンドのギタリストがレコード会社や自分の所属事務所を相手に詐欺を仕掛けるというお話。rhymestarの宇田丸氏も評を載せてる通り、癖の強い登場人物には恐らくモデルがいるんだろうなーという感じだし(モロ分かるのは世田谷ベースの所ジョージ)、日本の音楽業界の裏舞台を知れる面白さがある。芸能村と音楽村の確執だったり、業界ゴロと言われるような業界人に情報を右から左に流すだけで生活する音楽ジャーナリストだったり、バンドマンをサポートする地元のケツ持ちの存在だったり、レコード会社が無名バンドを売り出す時の契約の仕方だったりとドロドロした部分の描写が面白いし、それをクライムサスペンス的にエンターテイメント出来ている点は面白い。あと、ロッキンオンのイメージにはない「音楽的な」描写が美味いのも良かった。この「音楽的」というのは音楽の楽理的だったり制作手法とかの描写なんだが、きちんとギターの奏法や曲の録音方法、マッシュアップDJの手法なんかについてもストーリー展開の邪魔にならない程度に細かく描いており楽しめる。結構アーティスト名や曲名も実名で登場してくるので(題名にもなってるストーン・ローゼスやハッピーマンデーズとかは置いておくとしても、ジャームス・ブラントとかちょっと可愛そうな登場の仕方…)、知ってる人はそういう音楽小ネタも面白い。

ただ、ちょっと冗長な面もあって、バンドマンと対立する芸能事務所の社長や昔の悪友との結構派手な立ち回り・喧嘩シーンなんかが多いんだけど、個人的には本作でアクション要素は要らないんじゃないかなーと思ったり。バラバラだった家族の再生物語とかも盛り込まれていて、ちょっと蛇足感が強い。もうちょっとすっきり300ページくらいにした方が作品としては完成度上がるんじゃないかなーと。