midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「ジェームス・ブラウン ~最高の魂(ソウル)を持つ男」を観る。

音楽映画にはありがちなストーリーではあるけど、実に面白かった。タイトル通り、ジェームズ・ブラウンの伝記映画で、貧しい家庭から音楽で成り上がり、大統領と会うまでに上り詰め、妻へのDVや独裁的なバンド(JB'S)への態度による幾度にもわたる決裂や息子を失ったことの悲しみによるドラッグによる没落と、最後の最後旧友ボビー・バードらに何とか祝福されながら自分を奮い立たせて復活するというお話。個人的な信仰というか尊敬があったミック・ジャガーが制作を務めている。キャストはほとんど知ってる人がいなかったのだが、嫁さん役でジル・スコットが出てるのは確認できた。アロー・ブラックも出てるらしいけど観てる間は気づかず。そして、主演のチャドウィック・ボーズマンという人がクリソツでびっくりする。単に役作りというだけでなく、恐らく地声からして似てるんだろうけど、シャウトする歌い方とか、股割りまでこなすアクションみたいなJBらしいポイントは勿論、1ファンとしてJBのイメージであった「不敵で過剰な自信家でクレバー」な振る舞いとかも表現していてほんとにうまい。音楽映画として肝になるライブシーンがカッコいいという要素をちゃんと満たしており、最高。あと、すべての楽器を打楽器として(ドラムとして、要するにリズムを刻むため)グルーヴを出すんだとJB'Sに指導するシーンとかもあってファンとしては嬉しかった。

そして、ファンとしてはこれまで知らなかったJBの側面を知れたことも面白かった。特に作品通じてキーとなるボビー・バードとの関係性。実際に彼のレコードも持っているし、ファンではあったのだが、JB'SでJBの代わりに歌ってる人、くらいの認識しかなかったのが事実なのだが、彼がJBを刑務所からフックアップして支え続けたというのは知らなかった。しかも、もともとは彼自身がバンドのフロントマンであり、JBのあまりのカリスマ性に一歩下がったらしい。らしいっちゃらしいけど、面白いエピソードだった。あと、今では伝説的な名演奏として語り継がれる有名なアポロシアターでのライブとかも、レコード会社的には難色を示していたけど、JBの説得に押されて実現したという裏事情も初めて知った。そして、そんな感じでいろいろ意見はしながらもレコード会社(というか彼担当のマネージャー?)とは割りとうまくやっていたというのも知れた。担当が亡くなったとき、白人に囲まれながら呆然とした顔で棺桶に土をかける表情に胸が熱くなった。また、キング牧師との関係性も初めて知った。彼の死の直後、暴動に発展する恐れのあるJBのライブを警戒しストップがかかるものの強行し、実際ライブ中に警官に反発しそうになった黒人客たちに対し非常にクレバーに諌めたシーンがあり、これも胸アツだった。

ちょっと難点をつけるとしたら、時間軸をかなり切り刻んで構成したことだろうか。物語のクライマックスにあたる場面を冒頭に紹介する、という見せ方は割とよくある構成だと思うけど、それだけじゃなく子供時代から青年時代から壮年時代からかなり細かく行ったりきたりするので、ちょっと整理がつきにくい感じもした。一応「どの時代のJBも、自分に自信を持って戦ってきた」ことを表現するためのラストライブに臨むシーンの演出につながってることは理解できるんだけどね。あと、個人的にはボビー・バードだけじゃなくてJB'Sの著名プレイヤーたち(フレッド・ウェスリーとかブーツィーとか)にも少しスポットライトを当ててほしかったなぁ、と思う。