midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「秘密と嘘」を観る。

秘密と嘘 (字幕版)

秘密と嘘 (字幕版)

タイトル通り、イギリスのロンドンを舞台にある複雑な関係に陥ってる家族にまつわる秘密と嘘を暴き出す物語。マイク・リーという舞台出身の人が監督をしているとのことで、全く脚本がなく役者たちが状況に応じて即興で演技しているらしい。確かにそれらしい生々しいやり取りが多くて、変な緊張感を味わえる。話の中心になるのはシンシアという学も教養も財産も友達もない身勝手な白人の中年女性で、彼女が必死に取り繕ったりひた隠しにしたことで家族に生じた亀裂がストーリー全体の軸になる。

感想としては、面白いは面白いんだけど、最後家族みんなの「秘密と嘘」が暴かれる場面で、一番根幹にある「黒人女性ホーテンスの出生の謎」について暴かれないのがとても不満。このホーテンスという人が大変できた人で、かつて自分を捨てた母を真実を知るために自分から訪ね、自分を生んだことすら忘れていた実の母親を懸命に赦そうとしてるんだけど、自分だったらこんな身勝手な母親一度会って軽蔑して終わるだけな気がする。そして、出生の秘密を知りたい女性(と観客)の疑問に答えてくれないのは物語的に大きなマイナスポイントだと思う。15歳の時に妊娠し、相手について説明するのは「あまりに苦痛なので出来ない」というシンシアの言からすると黒人男性にレイプにでもあったのかなと思うけど、それならそれでそれを知りたがってる我が娘に応えてあげるのがせめてもの礼儀な気がするけど、こういう感覚って日本的だろうか。そしてラストシーン、自分が捨てた娘と育てあげた娘を前にして「人生って素敵ね」などとほざくのだが、「てめーが言うな!」と突っ込んだ人は多いんじゃないかと思う。

てな感じで、緊張感あふれる物語は好きな部類なんだけど、最後大きなしこりが残ってしまった残念な作品。