midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「エレニの帰郷」を観る。

アンゲロプロスの遺作。全体に寒そうな雰囲気で、ロングのショットが多かったり、ゆっくりパンしながらの長回しのカットが多かったり、いつものアンゲロプロス節が感じられて贅沢な映像体験を堪能できたけど、ストーリー的にはちょっとポップというか色々盛り込み過ぎてうまく消化できなかった感じも残った。エレニとその夫、友人、子供と孫のエレニをめぐる50年近くにわたる物語。

何しろ1950年代のギリシャに始まり、2000年を迎えるドイツのベルリンでエレニが亡くなるまで、カナダのトロントやらアメリカのNYやらイタリアのローマやらコロコロと時代も場所も切り替えながら物語が進むため、現在のシーンがいつどこのものかを把握するのが結構大変。終わってみると意味や必要性が良く分からなかったシーンとかもあるしなぁ。ラストシーンも印象的だけどどう解釈していいのか分からんというか…。

まぁ、役者たちの悲しみを湛えた演技を抑えた色調でじっくりと描き出す映像だけでも見ものだと思う。特にブルーノ・ガンツ演じる、エレニの友人でありながら一途にエレニに想いをよせるユダヤ系の爺さんの姿が切ない。戦後イスラエルに飛ぼうと思っていたところを、エレニに合わせてアメリカに渡り、エレニの息子をギリシャから逃がしたり、終始献身的に尽くすのにエレニに相手にはされず、最後は自分で死を選ぶという。

あと、彼らのように時代や国に影響されて人生が形作られてしまうのに比べて、かなりの部分の人生を自分の意思で選択することの出来る自分は恵まれているなぁと改めて思う。