midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

アバウト・シュミット」を観る。

正直、微妙。アレクサンダー・ペイン監督、「ネブラスカ」がたまたままぐれだったのだろうか…。名作と評判も高く、期待して観たのだが…。

保険会社に定年まで勤めた冴えない男が定年後の人生を右往左往する様をロードムービー的に綴る物語。ジャック・ニコルソンが意外に情けないカッコ悪い男を演じている。

人生なんて思い通りにいかないことばかりだ。真面目に働いてたら幸せなんてことは絶対にない。シュミットは丁寧に生きてきたつもりで、自分の人生をきちんとマネジメントできていない人間である。長年連れ添ってきた妻とはほとんど反りが合わず、大事な一人娘はいけ好かない詐欺師みたいな怪しい男と結婚する意志を固め、旧友とも妻との不貞が原因で喧嘩し、人生のほとんどの時間を費やしてきた仕事の後釜は生意気な若造で自分のやり方に従わない糞野郎である。人生に血迷ってキャンピングカーで旅に出て、道中に出会った同年代の女性に急に甘えた挙げくキスをして激しく拒まれたりする姿は痛々しい。退社の際や結婚式など、重要な「儀式」では徹底して凡人的に体裁を繕っているが、シュミットはいらだっている。そして、その捌け口を会ったこともないアフリカの孤児に向けた募金と手紙という形でぶつけるのだ。この生産性のない行為が切ない。映画のラストシーン、何通も送ってきた孤児に対する手紙に対し、孤児は字が読めないので絵を送ってくるのだが、この徒労感は凄まじい。こんな人生にだけはしたくないと思わせる痛恨の描写だ。

あれ、こうやって書いていくと「哀れな男を描く映画」としては傑作かもしれないと思い始めてきた。まあなんにせよ地味な映画ではあるんだけど。